目次
ACTってなに?〜私は不良品なのか〜2つの考え方と行動療法の流れ
このブログで解説しているACT(アクト=アクセプタンスコミットメントセラピー)は
を目的としています。

ACT(アクト)は
不安やネガティブを消そうとしたり、ポジティブに変えようとする戦略は一時的なもので
長期的には効果がないか、がっかりする結果にしかならない。
だから、感情や思考、コントロールできないものを受け入れて
今出来る、人生の価値に基づいた行動をすることが大切だよね!
という考えです。

このブログで個別に紹介していた分野を総合的に実践するのがACTです。
個別でも力を発揮しますが、一つの目的を持って総合的に活用することでより力を発揮します。
- マインドフルネス(気付き)
- アクセプタンス(オープンになる)
- 脱フュージョン(思考の観察)
- 今、この瞬間と接触する
- 価値を探る
- 価値に基づいた必要な行動を取る
ACTは「行動主義の心理療法=行動療法」の第3波です。
行動療法の第1,2波の足りないところを見事に補っています。
そしてACTの根底にある考えなど
これらの流れを知ることでよりACTを活用できると思うのでご紹介します。
ACTは大きな心理学の流れと違う
多くの心理学はマインド(心、精神)を多くの部品からできている機械のように扱っています。
欠陥部品は修復、交換もしくは除去し、機械を正常に機能させるイメージです。
そのため
機械論の捉え方
- 機能不全
- 適応できない
- 病的である
これらの思考や気持ち、記憶など
客観的な要素が存在すると考えています。

これらの、心理学で大きな流れの考え方は
「機械論(きかいろん=mechanism)」という哲学が基になっています。
現在では要素的実在主義とよばれるものです。
※要素的実在主義=元はS•C•ペパーが唱えた世界観の一つで「機械論」と呼ばれていたが、ネガティブな意味合いで受け取られることがあるため、要素的実在主義と言い換えられるようになった。
ACTの基になる考え!機能的文脈主義
多くの心理学が「要素的実在主義」を基にする中、ACTは別の哲学を基にしています。
例えば、部品が壊れて動かなくなった車があるとします。
この車は多くの場合
壊れた車をどう捉える?
- 壊れている
- 欠陥がある
- 廃車
- 機能不全な車
と客観的な要素から表現されるかもしれません。

ですがこの車が目的を果たす、効果的に働く状況。
つまり、この車を最大限に活かせる使いみちを考えることもできます。
- 子供の秘密基地にする
- 外装を塗り替えインテリアにする
- ドッキリを仕掛ける時につかう
- 整備士のトレーニングに使う
壊れた車はこれらの状況でとても機能的に働きます。
トナカイさんの真っ赤なお鼻は、暗い夜道では役に立つと言ったサンタさんのような考え方です。

つまり、ものごとが具体的な文脈の中でどう機能するかに目を向ければ
本質的に問題、機能不全、あるいは病的である思考や感情は存在しないと考える哲学。
この哲学を
「機能的文脈主義(きのうてきぶんみゃくしゅぎ=functional contex-tuakism)」
といい、これがACTの土台となる考え方なのです。
機能的文脈主義!私達に短所ってあるの?
少し前に、ある政治家の方が
「LGBTは子どもを作らない、つまり『生産性がない』」と発言され
問題となりました。
機会論の観点から正常な人間を一面的に捉えると
- 異性を愛し
- 子供を産み育て
- 社会に適合し、国に貢献する
そう考えるならば、それができない場合「異常・症状・病的」と見なし
「修正、改善」などが行われるべきだとイメージすることができます。

しかし、LGBTの方々を機能的文脈主義で捉える
=LGBTの方々が活躍できる場面を考える方法もあるということです。
最高に機能する場面を考えることが出来る
- 生き方の多様性を伝える
- 幸せのあり方を問い直す
- 自分と違う他者を許容する豊かさを示す
- 生きる意味や人としてのあり方を問いかける
これは一例でしかありませんが、LGBTの方々は
見ている人たちに社会的な豊かさを問い直す場面で非常に機能的な存在です。
短所を活用する心理学
短所だと思われていたところを「改善ではなく活用」しようとする動きは
心理学全体でも急速に広まっています。
- 不安が強い=不安を準備の原動力に当てれば成功率が高まる。
- 協調性がない=独自性が高い。
- 外向性がない=内向性が高く共感能力に長けている。
人生の危機や失敗、短所と扱われていた部分のリスクを理解し
ケアしながら、特性や機会として利用する考えです。
皆さんが持っている特性や、性格傾向、経験や記憶を
「良い悪い」で判断せず、受け入れ、機能する面を見つけ利用する方法です。
ACTなど、最近の心理療法には
「マインドフルネスやアクセプタンス」が多く取り入れられています。

機能的文脈主義の「病的と捉えず、機能する面をみつける」という考え方と
マインドフルネスやアクセプタンスの
「思考を良い悪いで判断しない」捉え方の相性が良いのかもしれません。
ACTのアプローチ
機能的文脈主義=
「基本的に問題、機能不全、あるいは病的である思考や感情は存在しないと考える哲学」
が基になっているACTでは機械論的な考えを持って自分と向き合おうとしている人達にも
全く別の角度でアプローチします。
- 自分を不良品と感じる
- 自信や自尊心が欠けている
- 取り除くべき欠陥がある
- 不安、ネガティブ、辛い記憶等がある
ACTではこれらを「症状」と捉えず、緩和や除去を目的としません。

思考や感情を「症状」と捉えると、悪く、有害で異常なもの
取り除かなければ正常で健康になれないことになってしまうからです。
感情や思考、コントロールできないものを受け入れる
ACTではアクセプタンスや脱フュージョン、マインドフルネスを活用し
思考や感情との関係性を根本的に変えます。
そして好ましく無い思考や感情を「症状」
と捉えなくて済むようにすることが狙いの一つになります。
自信がなくても行動すれば自信はあとからついてくる ――マインドフルネスと心理療法ACTで人生が変わる (単行本)
ACTは行動主義アプローチ!
思考や感情との関係性を変えた後は「価値」や「今、現在」
を軸に行動することがACTの大きな目的の1つです。
心理学の基礎でフロイトが発展させた、人の心や精神を追求する精神分析では
心や精神を完全に理解するために
「行動化をやめ、完全に椅子に座って動かない状態でセラピーを行わなければいけない」
と思われていた時期もあるほど行動より、精神や心に重きをおいていたそうです。

そんな中、心理学の第2世代として「行動主義」が生まれました。
行動主義も心理学に大きな影響を与えています。
行動主義の「原理」を活用して心の問題を治そうとする行動療法には3つの大きな波があり
行動療法の第3世代=ACTが生まれるまでの流れを大まかに解説します。
ACTは行動主義の第3波
- 第1波
1950年〜60年に最も人気のあった「行動主義の第1波」の臨床家の多くは
思考と感情を軽視する傾向にあったらしいです。
この第1波の影響で、残念なことにその後の行動主義者もすべて
人間をロボットやネズミのように扱うと思われてしまうことになったそうです。

- 第2波
1970年代に高まってきた第2波は
第2波の主なテーマ
- 不合理
- 機能不全
- ネガティブ
- 間違った思考
を問題視したり、疑いの目を向けたりして、より合理的で
機能的でポジティブな、もしくは現実的な思考に変換することが重要視されました。
認知行動療法(CBT)が第2波の中心勢力となり
僅差で論理行動情動療法(REBT)がそれに続く形だったそうです。
認知行動療法は自分の考えの歪みに気づいてそれを直していくイメージの療法です。
うつ病や不安障害などを中心に効果を示す実証データが豊富で今でも高い効果が期待されています。
- 第3波
そして行動療法の第3波といわれる中の一つにACTが登場します。
ACTと肩を並べる第3波の中心的なものには
第3波の心理療法
- 弁証法的行動療法(DBT)
- マインドフルネス認知療法(MBCT)
- 機能分析心理療法(FAP)
- 行動活性化(BA)
これらのセラピーはすべて、従来の行動介入に加えて
アクセプタンスとマインドフルネスに重点をおいていることが特徴だそうです。
説明がわかりやすく、とても使いやすいのでマインドフルネスを始める最初の本におすすめです!
マインドフルネスであなたらしく -「マインドフルネスで不安と向き合う」ワークブック-
ACTの起源についてもっと詳しく知りたい人は
「臨床行動分析のABC/ユーナス・ランメロ」がおすすめのようです。
行動主義の父ジョン・B.・ワトソンを動画で紹介
行動主義は人の内観(心の動き)などではなく
刺激に対する反応など、外部から観察できる現象を研究するのが特徴です。
行動主義の父ジョン・ワトソンを動画でご紹介しています。
まとめ
心理学や心理療法を機械論だけで見てしまうと
ACTなどの取り組みに初めは違和感を感じるかもしれません。
多くの心理学や心理療法の中からいいと思える考えや
自分にあった方法を見つけるのがおすすめでACTだけが絶対正解!という訳でもありません。
私は今までのやり方とは全く別のアプローチで自分のマインドと向き合える視点を与えてくれたACTのことはとても気に入っています。
最近ではACTをはじめ多くの、日常生活やコミニケーションでも使える心理療法が
とてもわかり易い形で紹介されています。
自分に合ったものを探してみるのも面白いかもしれません。