前回、脱フュージョンのテクニックについていくつかご紹介しましたが実践しても上手くいかない人もいると思います。
この記事では脱フュージョンが上手くいかない人の特徴と、脱フュージョンの本来の目的を解説します。
脱フュージョンを正しく理解してより実生活で役立つ心理テクニックとして活用してください。
目次
脱フュージョンが上手くいかない人の特徴
脱フュージョンを行ってみたが効果が実感できない、むしろ悪化しているように感じる人もいるかもしれません。
そんな人が陥りがちなポイントをまとめてみました。
皆さんも自分がそのような状況に陥ってないか確認してみましょう。
ポイント
- 感情コントロールのテクニックだと思っている
- 思考は感情から生まれると思っている
- 自律性解放現象が起きている
- 全ての思考を脱フュージョンしようとしている
感情コントロールのテクニックだと思っている
脱フュージョンに一番多い勘違いは「感情コントロールテクニックだと思っている」だと思います。
脱フュージョンの狙いは、気持ちを楽にしたり、自分を悩ませている考えを取り除いたりする事ではありません。
脱フュージョンは、「役に立たない思考」にとらわれて行動に影響が出る事を減らし、今に集中してマインドフルに生活をする事です。
苦しい思考から脱フュージョンを行うと、時にその思考が無くなったように感じたり、気分が良くなったと感じたりする場合があります。
そうなったときは次の二つのことを理解しておきましょう。
- その楽になった感覚は思いがけないご褒美のような物で、脱フュージョン本来の目的ではない。
- いつも起こるわけではないので期待してはいけない。
脱フュージョンを行うと気分が良くなることは非常に多いです。
気分が楽になったと感じたときは、その感覚を存分に味わってください。
しかし、脱フュージョンは感情を自在にコントロールできる魔法ではありません。
思考にがんじがらめになってしまった自己をそこから切り離すための方法です。
そうすれば今の瞬間体験に集中でき、自分が大切だと思うことに取り組めます。
脱フュージョンの根底にある「容認(アクセプタンス)」は感情コントロール「感情を変化、遠ざける、追い払う」とは真逆の考え方です。
なので脱フュージョンを感情コントロールテクニックとして使うと、遅かれ早かれがっかりすることになります。
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思考は感情から生まれると思っている
人間には「感情原因バイアス」という、様々な問題は感情が原因になっていると思い込む傾向があります。
脱フュージョンをして全く効果が無いと感じる人の中には、思考は感情から生まれると勘違いしている方もいると思います。
感情はいつも複数の要因に影響を受けています。
感情の例
- 低気圧のせいで気分が上がらない
- 血圧が低く朝が辛い
- 風邪でだるい
- 周期的なホルモンバランスの変化で感情の浮き沈みがある
- 新しい環境で警戒心が高まっている
- 脳が疲れていて複雑な問題を考えることにイライラしている
上記の例は環境や体内のホルモンなどの要因で感情が変化する例です。
思考が感情を作り出すという考えにとらわれ過ぎないでください。
感情はいつでも複数の要因に影響されており、思考はその要因の一つに過ぎません。
思考から脱フュージョンしたとしても、感情には全く影響しない場合もあるのです。
大きな波が押し寄せてきた時に、慌ててその波に飲まれてしまうことなく、サーフィンするのが脱フュージョンのイメージです。
自分に向かってきた波自体が消えないことに戸惑うことはありません。
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自律性解放現象が起きている
自律性解放現象とは、瞑想初期に起きることもある妙な不快感に襲われる現象です。
今まで向き合って来なかったマイナスな思考や、目をそらしていた現実などに改めて向き合うとネガティブが解放されて不快感が現れることがあります。
これが起きたら、瞑想でも脱フュージョンでも無理に行う必要はありません。
自律性解放現象は誰にでも起こる可能性のある自然な現象です。
「不快な気持ちになってるなー」と嫌な気持ちになっていること自体にマインドフルになる事で乗り越えられます。
体験の回避
嫌な記憶や感覚を避けようとすると鬱になる傾向が高まることがわかっています。
不安症な人は嫌な体験を回避するより、不安を脱フュージョンし、解決策や対応を考える方が精神衛生上お勧めです。
自律性解放現象脱にとらわれた時は、脱フュージョンは「我慢」したり「諦めたり」「耐える」ことと違い「受容」することが目的であるという事を思い出して取り組んでみてください。
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全ての思考を脱フュージョンしようとしている
例えば貴方がとても太っていて、健康に不安があり、自己否定的な思考にとらわれていたとします。
思考は「このデブ」「一生結婚なんて出来ない」「お前には魅力が無い」「病気で苦しんで死ぬ」と語りかけて来ます。
そんな思考と脱フュージョンをして、全ての思考から解放されて気分が楽になっただけでは本来の目的は達成されていません。
自己否定的な思考との戦いをやめ、本当の価値ある目標に的を絞り、自分が始められる範囲でのエクササイズを考え、健康的な生活に向け行動を起こすべきでしょう。
脱フュージョンの目的は「役に立たない思考」から距離をとり「受容」する事。
さらに思考との戦いをやめそのエネルギーを今必要な行動に回す事です。
人生が上手くいかないなら、唯一賢明な行為は、それを変えるために行動する事です。
思考の「受容」から始めれば行動はさらに効果的になります。
脱フュージョンで全ての思考から解放されようとするのではなく、本当に自分が欲している、価値のある、役にたつ思考に耳を傾け、向き合う事を目指し、行動に移しましょう。
行動に移す例
- 大勢の前でスピーチする緊張や焦りから脱フュージョンし準備に取り掛かる
- テスト前の誘惑や遊んでいる時の罪悪感から脱フュージョンし少しでも問題を解く
- 周りの人より能力が低い、特徴が無い自己否定感から脱フュージョンして習い事を始める
まとめ
今回は脱フュージョンが上手くいかないと感じている人に多い勘違いをいくつか説明しました。
脱フュージョンの中核を表すのに最適な「ニーバの祈り」というフレーズがありますので最後にそれを紹介します。
変えるべきものを変える勇気を、
そして、変えられないものと変えるべきものを区別する賢さを与えて下さい。
- 脱フュージョンをコントロール戦略と捉えるといつかガッカリする。
- 思考から脱フュージョンしても感情には全く影響しない場合もある。
- 自律性解放現象も焦らず向き合えば乗り越えられる。
- 受容したら行動にエネルギーを回そう。