狩猟民族時代は皆が平等な社会だった!?現代人の心理を文化人類学から考察!

進化 アイキャッチ

狩猟民族時代は皆が平等な社会だった!?現代人の心理を文化人類学から考察!

 

私達の心理は進化過程から大きな影響を受けているとする考えがあります。

 

このブログでも人の不幸を喜ぶ感情

「シャーデンフロイデ」について解説してきました。

 

 

 

シャーデンフロイデの研究の結果、私達の脳には「誰にでも」

他人の不幸を嬉しく感じるシステムが備わっているようです。

 

 

他人の不幸は面白い

 

 

この他にも

 

一見不思議な心理現象

  • 自分が損をしてでも不公平を正そうとする
  • 他人に親切にすると幸福度が高まる
  • 金儲けしている人を悪い人だと感じる=嫌儲バイアス
  • 親切な人がモテる、など

 

 

なぜ、このような心理が長い進化の過程で私達に組み込まれたのか。

 

今回は文化人類学の観点から現代人の心理を考察してみようと思います。

 

 

格差は心を壊す 比較という呪縛

 

 

順位性から社会性へ変わった

 

人類が生まれる前の私達の祖先は

他のサルと変わらない順位制の中で暮らしていたと考えられています。

 

 

 

 

体の大きな、腕力の強いオス=支配者が希少な資源(エサ)やメスを独占し

その下の弱い従属的な者を支配する序列制度です。

 

そこから狩猟採取(しゅりょうさいしゅ)民族となり新たな社会性が生まれてきます。

 

 

狩猟時代との齟齬

 

 

 

たてがみ君

狩猟採集民族とは

野生の動植物の狩猟採集を生活の基盤とする社会のこと。

 

 

 

人間の脳は狩猟民族時代に多くを学んだ

 

進化の過程で、人間の脳が今とほぼ変わらない大きさになったのは

20〜25万年前だと考えられています。

 

 

 

 

その頃の私達は生活に必要なエネルギーを狩猟や採取によって得る民族狩猟採取民族

農耕や牧畜が始まる前は、全ての民族がこれに該当していたと考えられています。

 

さらに、そこから農耕・牧畜を始めたのが1万〜1万2千年前だと考えられています。

 

 

 

 

つまり、人類は「今の脳のサイズ」に進化してから

現在に至るまでの95%程の期間を狩猟採取民族で過ごしているため

 

その頃の生活や脳の使い方を色濃く残していると考えられているのです。

 

 

狩猟採取民族時代は平等社会だった!?

 

お相手
「狩猟採取民族時代は平等な社会だった!」

 

そう聞くと信じられないと感じる方も多いと思います。

 

ですが文化人類学では繰り返し狩猟採取民族時代

「異常なまでの平等社会」が報告されているようです。

 

 

 

 

狩猟採取民族時代の社会は

 

狩猟採集民族は平等社会

  • 独占はなく、食料を分かち合い
  • 物資は物々交換ではなく、相互的な贈り物交換

 

などが行われていたとされています。

 

 

 

 

4つの大陸の比較的新しい24の狩猟採集社会について調べた100以上の報告書を

再調査した研究があります。

 

その研究では、狩猟採集民族の間で

 

狩猟社会の研究結果

  • 明確な社会序列が存在しない
  • 食料配分での優遇は無い
  • セックスパートナーを選ぶ権利は序列と無関係

 

など

 

採取狩猟者の間で序列を認めることができないのはどの文化にも共通しているそうです。

 

ここまで聞くと

 

たてがみ君

「そんなの信じられない!」

「人間は生まれつき平等を大切にする心を持ってたって言いたいの?」

 

と感じるかもしれませんが、そうではありません!

 

 

公正世界信念

 

 

文化人類学者の間で今一般的になっているのが

 

当時の人類は

「反支配戦略」「逆支配戦略」

と呼ばれる方法で平等を保っていたという考えです。

 

想像と違う!殺気立った平等社会があった?

 

ここからは文化人類学者のクリストファー・ボームが提唱する説を軸に解説します。

 

ボーム教授は150の狩猟採集民族の社会・政治的な詳細をデーターベースにまとめ

狩猟民族時代の平等性について分析を行いました。

 

 

 

 

その結果、これらの社会に共通していたのは

「特定の個人が権力を持ちすぎることを防ぐ仕掛けがあること」

だったのです。

 

 

つまり、狩猟採集民族時代の人類には

利己的な権力者を抑え込む社会的チェック機能が有効に機能していたようです。

 

その代表的な2つの仕組みが

  • 反支配
  • 逆支配
と呼ばれるものです。

 

 

 

具体的には

平等を保つ社会システム
  • 批判や嘲笑
  • 公の場での不支持表明
  • 追放
  • 排除
  • 抹殺

 

など、平等を保つためにかなり過激な方法も取られていたと考えられています。

 

 

平等を保つ為の社会システムとして、富を独り占めする悪質な侵略者や個人に対し

狩猟民族時代の社会殺害も辞さなかった事例が数多く発見されているようです。

 

 

 

 

ボーム教授はこれらの証拠を分析し

狩猟採取時代の準合法的な殺害による死亡率

現在のシカゴの殺人率に匹敵する可能性があることを発見しています。

 

※シカゴは多いときで年間700件以上殺人事件が起きているようです

 

 

たてがみ(ブログ主)の考察

 

これは私の考察ですが、この文化人類学で提唱されている平等社会は

現在、心理学などで繰り返し観測されている現象にもつながってくると思います。

 

現代で観測される心理
  • 贈り物にはお返しを行けないといけない心理(返報性)
  • 親切な男性がモテる
  • 成功した人が失敗するのを見ると喜びが生まれる(シャーデンフロイデ)
  • 親切やボランティアを行うと幸福度が上がる
  • お金を他人のために使うと満足度が高い
  • 不公平を退けるためには犠牲もいとわない(利他的な懲罰)
  • マッチャー(損得のバランスを考える人)はテイカー(奪う人)を許さない{アダム・グラントGive and Take}

 

 

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代

 

 

人類がどうしてこれらの心理を持っているのか、それは

人類の脳が現在の大きさになってから95%を過ごした

狩猟採取民族時代の平等社会と、平等を維持しようとする行動が根底にあるからかもしれません。

 

 

 

 

そしてこれらの心理を「意外な心理現象だ」と感じるのは

文化人類学で繰り返し発信されている「狩猟採取社会は平等社会だった」

が知られていないからなのかもしれません。

 

 

把握しておこう

 

 

誹謗中傷は劣等感、社会的比較や興奮、優越感を得るためなどから行われる場合も多いです。

 

妬みの七変化 アイキャッチ

 

 

ですが誹謗中傷やシャーデンフロイデに「正義感」を感じている人がいるのも確かです。

 

この心理動作は、平等社会を保つために、何かを独占している人物に対し

反支配・逆支配を行ってきた人類史も影響しているのかもしれません。

 

 

シャーデンフロイデ: 人の不幸を喜ぶ私たちの闇

 

順位制から平等社会に変わった2つの理由

 

では、どうして人類は狩猟採取社会になって

順位制から平等社会に移行したのでしょうか?

 

それについての合意は科学者の間でもまだ得られていません

 

ここでは、議論の中でも最も説得力があるとされる説をご紹介します。

 

ひとつづつ検証しよう

 

 

それは

「武器が発達して大きな獲物を仕留めるようになったこと」

 

平等社会が生まれたとする説です。

 

比較 アイキャッチ

 

武器の発達で順位性が低下した

 

マンモスのような大型の獲物を仕留める方法や武器を手に入れたことで

どんな人でも他人の命を奪うことができるようになりました。

 

 

 

殺傷能力の高い武器の登場で、それまで支配や序列の目安であった

体の大きさや腕力、肉体の強さが持つ意味が低下したという考えです。

 

武器や採取技術が発達した狩猟社会では

 

武器でパワーバランスが変わった
  • トップでいること
  • 独占すること
  • 支配的であること
  • 下位者から恨みを買うこと

 

のリスクが高まったという考えです。

 

肉を皆に分配する必要が生まれた

 

順位性の時代はチンパンジーのように、肉は小型の動物に依存していたと考えられています。

 

ですが狩猟の武器や技術が発達したことで

大型動物を仕留められるようになり変化することがあります。

 

 

 

 

それは、個人や1家族では食べきれないほどの肉が取れてしまうことです。

当時は肉の加工や貯蔵の技術がないので、腐るまでに食べなくてはいけませんでした。

そのため獲物の肉はメンバーに分配されたのです。

 

 

 

 

 

支配者が先に資源(肉など)を独占して

従属者は余り物を食べる時代が終わったと考えられています。

 

ボーム教授によると

人間の持つ「道徳」に関する考えもこの時代に生まれたと考えられています。

 

 

モラルの起源―道徳、良心、利他行動はどのように進化したのか

 

平等社会から不平等が拡大していく

 

長く続いた狩猟採集民族時代が終わり

およそ1万〜1万2千年前頃から中東の肥沃の三角地帯で耕作が始まったと考えられています。

 

そして最近の5千年の間にその他の地域でも独立した農耕が始まったそうです。

 

 

 

 

初期の農業社会は「有力者」に率いられながら

小さな共同体で「移動農業」を繰り返していたことが多かったようですが

 

農耕民族初期の社会システム

  • 嘲笑
  • 追放
  • 排除

 

などの反支配戦略は依然、健在だったと考えられているようです。

 

 

過度に論理的な人

 

 

文化人類学の科学者の間でも

どうして農業が不平等を加速させていったのかについての合意はまだ得られていないようです。

その中でも考えられているのは

 

不平等が加速した原因(仮説)
  • 肉のように腐らない資源を手に入れたから
  • 食料の貯蔵の必要性から定住生活になった
  • 小さな共同体から、定住化により人口が集中したこと
  • 穀物は他の作物より税制を導入しやすかったから

 

などの理由で不平等が拡大したのではと議論されているようです。

 

進化心理学への指摘

 

文化人類学進化心理学への代表的な批判として

 

「もっともらしい、都合のいい物語を作っているだけ(Just-So Stories)]

 

と呼ばれる懐疑(かいぎ)的な見方もあります。

 

 

 

 

平等社会であったと信じたい個人や集団が

自分たちの「もっともらしい作り話」

に都合のいい証拠ばかり集めてしまったことも考えられます。

 

 

 

 

実際に狩猟採集民族時代が平等社会だったかはタイムマシーンで過去に行かない限り

100%真実かはわかりません。

 

私はこの仮説、シナリオは可能性としてはありうるものだろうと感じます。

 

文化人類学の長い研究と、証拠の数々は確かに存在しているのですが

どの程度信頼を置くかは見る人次第と言うところもありそうです。

 

 

まとめ

 

今回は誹謗中傷やシャーデンフロイデ、ほか様々な心理現象を

どうして人類が共通して持っているのか。

 

どうして長い選抜の歴史で、そのようなシステムが残ったのかを

「狩猟採集民族時代は平等社会だった」をもとに解説しました。

 

「今があるのは過去の積み重ね」は

個人史においても人類史においても言えることだと思いました。

 

 

 

 

 

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