目次
夢で問題解決能力がアップする!睡眠が問題解決に繋がる科学的な理由
人間と他の動物との違いといえば、物を作るとか、理性的であるとか様々ですが、レム睡眠(夢を見る睡眠)の時間割合がとても多いことも違いの一つです。
実はこのレム睡眠が人間の進化に大きく関わっていて、洞察力、創造性、問題解決能力の発達に深く関わっていることがわかってきました。
夢は自分が内側に抱えている問題を探りだすのに使えると考える人は多いと思いますが、なんと夢自体が問題を解決する方法を教えてくれるようです。
人間の特徴の一つでもあるレム睡眠と人間的な能力についての関わりをご紹介します。
夢は問題解決能力をアップさせる
夢と問題解決能力の関係性についての研究は1970年代にまで遡ります。
当時から睡眠研究の総本山であったスタンフォード大学の睡眠学者ウィリアム・デメントは「夢は水平思考の変形であり、新たな視点から考えると、謎解きが可能になる」と考え実験をスタートしました。

デメントは500人の参加者を集め「O, T, T, F, F,…」このアルファベット5文字の後に続く2文字を答えるように指示しました。
半分のグループは午前中に問題を出され夜までに回答する。
もう半分は寝る直前に問題を出され翌朝回答を求められました。
結果、デメントの説の通り、問題を見てから眠ったグループの方が正解率が高かったのです。
睡眠が問題解決能力をあげる根拠の基盤となる実験でした。
眠るとリラクスするから効果的なのか?
デメントの実験の後、カリフォルニア・レディング・アカデミック・センター教授グレゴリー・ホワイトはリラクゼーションに着目して面白い実験を行いました。
ホワイトは参加者を集め「今気になっている個人的な問題」を8つ書き出してもらい
参加者の半数には夢を見た後に、もう半数にはリラクゼーションのエクササイズをした後に、自分の問題を解決する方法を訪ねることを10日間続けました。
ホワイトの予測通り参加者達の問題解決能力と悩みは軽くなりました。
そして、夢と関連付けて問題解決を試みたグループの方が問題を解決できる割合が高く、ストレスが大幅に低下していたのです。
リラクゼーション効果だけが問題解決能力向上の要因ではなく、睡眠が関わっている事がわかりました。
問題解決能力に大事なのは夢を見るかどうか!
その後、カリフォリニア大学サンディエゴ校のドニーズ・カイやサラ・ドメニックは問題解決能力を高めるのは、眠ることよりも、夢を見ることであると証明しました。
カイとドメニクの実験は異なりますが、どちらも創造性の必要なパズルや一見無関係な3つの単語を参加者に見せ、仮眠を取らせ、夢を見たグループと、見ることのできなかったグループに分けます。
するとカイ、ドメニックどちらの実験でも夢を見ることのできた参加者だけが問題解決能力が向上していました。
夢が持つ問題解決能力で有名な逸話は沢山あります。
ノーベル賞受賞者のドミトリ・メンデレーエフは、元素の規則性を見つけられないまま3日にわたる徹夜の後、諦めて眠ることにしました。
眠りについた1869年2月17日にメンデレーエフは夢を見ました。

既に知っている全ての元素を概観し、夢の中に表が現れ、元素が表にぴったりと当てはまって完成し、規則性を発見したそうです。
目覚めたメンデレーエフは、すぐに夢で見た表を紙に書き出し、そこから現代の元素周期表が誕生しました。
彼いわく、夢に出てきた表で後に訂正が必要だったのはたったの1カ所だったそうです。
その他にも
- ジキル博士とハイド氏のスティーブンソン
- プロゴルファーのジャックニコラウス
- インド天才数学者ラマヌジャン
- ミシンを開発したエリアス・ハウ
- レットイットビーとイエスタデイを作ったポールマッカートニー
など多くの偉人や文学者、芸術家、スポーツ選手、歴史上の人物が夢にインスピレーションを受けたり、夢で最良の方法を見つけ出したり、発明のヒントをえてきたことも偶然ではないようです。
夢は問題を解決する可能性が高い
夢が悩みや、問題を解決するのか。
そんな「夢セラピー」に現実的な問題の解決を期待できるのか調べたのがハーバード大学の睡眠学者ディードリ・バレットです。
バレットは転職や結婚、人間関係などで悩みを抱えている人達を集め、次のように問題を具体的に書き出し、記録するように指示しました。
- 寝る前に問題を短く書き出す、問題に関連するものをベット脇に置く
- ベッドに入ったら自分の悩みについて夢を見て、解決法を手に入れると自分に言い聞かせる
- 夜中寝覚めたら夢の要点をすぐにメモ
- もう一度夢に見たいと自分に言い聞かせながら眠りに戻る
- 朝目覚めたら、数分間じっと動かない
- その後ベットから離れ夢を思い出そうとし、思い出せたらポイントをメモする
- 問題の解決に夢が役立ったか評価する
この実験ではおよそ半数が自分の問題についての夢を見て、そのうちの7割が夢の中で解決法を見つけたと答えました。

例をあげると、二つの大学、どちらに進学するかで迷っていた女性は、飛行機にのる夢を見て、自分が今いる土地から遠いところに行きたいと思っていると悟った。
地元のスポーツチームに入り直そうか悩んでいる男性は、テント村をうろついては、テントの中をおずおず覗く夢を繰り返し見て、その度に落ち着かない気持ちになり、行動できない自分への不満があると感じチームに入り直したそうです。
これらがいい選択だったのかは分かりませんが、夢は問題に伴う強い感情を反映し、後悔の少ない選択をする助けになってくれる可能性があるようです。
夢と創造性
ノンレム睡眠(深い睡眠)には記憶を定着させるとても重要な働きがあります。
そして、レム睡眠(夢を見る浅い睡眠)には記憶を統合して、より高度な目的のため活用する、創造性と密接に関わる役目があることが分かっています。
レム睡眠のあいだ、脳は膨大な知識を吟味し、その規則性や共通点を見つけアイデアを生み出すようです。

カリフォルニア大学マシュー・ウォーカーとハーバード大学のロバート・スティックゴールドの共同研究ではレム睡眠から目覚めてすぐ睡眠慣性(起きているけど脳に眠りが残っている)状態の被験者に90秒程でできるテストを行いました。
すると日中の覚醒時より正解率が15〜30%向上しただけでなく、問題の解き方も日中の覚醒時とは違っていたと報告しています。
レム睡眠、特に明け方のレム睡眠状態の脳には論理を操るシステムがほとんど働いていない。
レム睡眠時の脳はなんでもありで、独創的な思考が混ざり合うような感じです。

レム睡眠は大量にある過去の知識から問題解決に必要な要素を素早くピックアップし関連付けたり、法則性を見つけ出す能力があります。
その時に個々に存在していた知識を組み合わさった知恵にする、学びから理解することを可能にする役目があるようです。
マシュー・ウォーカーは、このレム睡眠の能力こそが人間と一般的なコンピューターを分ける鍵になると考えています。
まとめ
私も長らく、レム睡眠なんて、ただの浅い睡眠だと軽く扱ってきましたが、知れば知るほど重要な役割を担っていることをに驚かされるばかりです。
眠ること、夢を見ることが人間に必要で、人間らしい発想や創造性の基盤になっている、そう考えるだけで今晩寝るのが少し楽しみになりました。
デメント教授のクイズ「O, T, T, F, F,…」の答え、後に続く2文字は「SとS」でした!
問題の「O,T,T…..」はOne,Two,Threeと英語表記数列の頭文字だそうです。
まとめ
- 眠ると門外解決能力が高まることが分かった
- 眠ることより夢を見ることが問題解決に重要
- 夢は歴代の発明や作品などにも関与している
- 夢は個別の知識を統合して、関連性のある知恵に変える