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誰にでも使えるソクラテス式問答!客観力を高め議論を明確にする質問術
話の通じいない相手、屁理屈をいってくる人、いくら説明してもこちらの意図を理解してくれない!
そんな時「ソクラテス式問答」に従っていくつか質問を投げかけてみましょう!
人は、誰かの指示に従うよりも、自分の意思で行動したいと望んでいます。
ソクラテス式問答を行うことで、相手は「指摘された!」と感じる事なく「自分で答えに辿り着いた」ような感覚を得ます。
またソクラテス式問答は自分自身にも行うことができます。
人の思考はバイアス(思い込み)や周辺の環境、状況に大きく左右され時に目的を見失ってしまう事もあるでしょう。
ソクラテス式問答で過去に紹介してきた、バイアスの軽減、知的謙遜を鍛える事も期待できます。
様々な場面で使えるソクラテス式問答をご紹介します。
ソクラテスに聞いてみた
明確化の質問
まずは明確化の質問を使って考えや話の境界線をハッキリさせることからスタートです!
話や問題の具体的なゴールは何だろう?このことをハッキリさせることを意識しましょう。
- 〇〇とはどういう意味ですか?
- 別の言い方をすることはできますか?
- 主な問題はなんですか?
- 具体的な例を教えてください
- そのポイントをさらに広げるとどうなりますか?
例えば、あなたの店にクレーマーがやってきて、不満に思っている出来事を列挙したとします。
共感を示しながら話を聞くことは大事です、それと同時に明確化の質問を使ってクレーマーの一番の目的を特定しなくては対応ができません。
明確化の質問で意図を探る
- 不満を言いたいだけなのか
- 返金を希望しているのか
- 誠意ある謝罪を期待しているのか
クライエントの言葉をひきだす認知療法の「問う力」―ソクラテス的手法を使いこなす
初期設定の質問
初期設定の質問は、相手の目的が少し明確になり、議論や話し合いが起きたとき、まず初めに聞いておくべき質問です。
問題の大きさや、捉え方などの認識を理解できる質問です。
- この問題はどうして重要だと思いますか?
- この問題は解決が簡単ですか?難しいですか?どうしてそう思うのですか?
- この問題につてどのような仮定が考えられると思いますか?
- この問題は、他の重要な問題や話題となにか関係がありますか?
初期設定の質問を行うことで問題に対する向き合い方や、重大性などの認識が共有されます。
初期設定の質問でわかること
- 自分が思っているより相手が問題を重要視、もしくは軽視しているか
- バイスガ強く問題を極度に楽観、もしくは悲観的に捉えている
- 問題への向き合い方や立場の違いが生じている
これらの前提を無視して話を進めると話がこじれることになります。
前提の質問
前提の質問は、問題について相手がどのような前提を持っているかを掘り下げる質問です。
分かっていること、分かっていないことを明確にしましょう。
- この問題について分かっていないことはなんですか?
- なぜこのような仮定をするのでしょうか?
- 〇〇という考え方には、どのような仮定があるのでしょうか?
- 今の考え方の代わりに、何を想定できるでしょうか?
- あなたは〇〇と仮定しているようですが、この理解で正しいでしょうか?
盲点に気付いたり、前提がズレていた事に気付きたい、気付いて欲しい時や
相手が極論を言ってきたり、自分の考えは絶対正しいと考えている人に有効な質問です。
「分かっていないことはなんなのか」という問は、普段自分には投げかけにくい事を実感できると思います。
知っていることの限界を知るという事ではこの質問で知的謙遜も養われそうです。
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証拠の質問
証拠の質問は、問題について、相手が持っているエビデンス(証拠)や知識のレベルがどれくらい正しいかを確かめる質問です。
前提の質問で分かったことの証拠や根拠をさらに深めて考えてみることもできます。
- 今の答えを真実だと考えた理由は何だと思いますか?
- 他に必要な情報はあると思いますか?
- どうやってその結論に達したのかを、もう少し詳しく説明していただけますか?
- そう考えた証拠を疑う理由は考えられませんか?
- どのような理由であなたはその考えを持つようになったのですか?
人間は感情が強く動かされたエピソードを強く記憶し、不安な事により意識が向かいやすい生き物です。
年上の人が、年下の人に「お前は視野が狭い!」や「経験がないから判断が甘い」と指摘を行うよりも、証拠の質問を上手く使って自分で気付く経験を促す事もできます。
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起源の質問
起源の質問は、問題について、相手が主張する証拠や意見がどこから来たものなのかを確かめるための質問です。
- これはあなた自身の考えですか、それともどこか他の場所から聞いたものですか?
- あなたの意見に影響を与えた人やメディアはありますか?
- どうやってその考えに至ったのですか?
- あなたがそう感じた理由はなんですか?
自分、もしくは相手が何かに影響されている事に気付くことができる質問です。
影響されることは悪いことではありませんが、影響を与えた元が信用に足るのかは確認しなくてはいけません。
また影響を受け行った選択、行動や決断を、自分の意思決定と混同してしまう事も多いので気をつけましょう。
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視点の質問
自問している時、二人で話している時、この視点の質問が力を発揮します。
問題について、第三者の視点を使いながら考え直したり、視野を広げたり、視点を変えてみるための質問です。
- 他の人やグループはこの問題にどう答えるでしょう?そう答えると思ったのはなぜですか?
- もし〇〇さんが反論してきたら、どう答えることができるでしょうか?
- 〇〇と考えている人はどう思うでしょうか?
- 〇〇と〇〇の考えには似ているところがあるでしょうか?または違うところがあるでしょうか?
第三者の目線を使って客観的視点を得る方法は、デバイアスや知的謙遜の記事でも紹介してきました。
ソクラテス式問答でも欠かせない要素です。
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結果の質問
結果の質問は、問題について、今の考えはどのような結果をもたらしそうかを確かめる質問です。
- 今のアイデアや考え方にはどのような効果がありますか?
- そのアイデアが上手く行く確率はどれくらいだと思いますか?
- その考え方が上手くいかなかった時の代替案は何があるでしょうか?
- あなたはどのような結果を予想しているのですか?
- もしあなたの主張が現実になったら、結果と他に何が起こると思いますか?そう思う理由はなんですか?
この質問は考えに深さと広さ、長期的な視野などを与えてくれる質問です。
賛成派と反対派に分かれる討論番組などもありますが、大抵議論は平行線を辿り答えが出ませんし、日常的にあれほど対立して人と話をするのは避けたいです。
結果の質問をうまく使って、自分の意見や、指摘を質問に変えてみましょう。
ソクラテス式問答の使用例
実際にソクラテス式問答をどのように使うのか知りたい方にお勧めなのは
ハーバード大学で政治哲学を教えているマイケルサンデル教授の授業「白熱教室」をYouTubeで見ることです。
第1回の授業は25分程度ですが
哲学という一見教え難いテーマを、サンデル先生は学生に質問を繰り返しながら進めていきます。
先生と生徒という立場の違い、質問に答える側もハーバードの学生なので聡明なやり取りが行われ「日常生活でこんなに上手く行くわけ無い」と思うかもしれません。
しかし、動画を見ていると学生からも意外にぶっ飛んだ意見や、的を外した回答も出てきます。
それらの質問にサンデル先生がどんな態度で接するのか、教授でありながら学生と対等な立場で話し合う姿、受け答えの表情や仕草など、とても参考になります。
そして授業の内容もめっちゃ面白いです!
これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
まとめ
国会やテレビの討論番組を見ても分かりますが、2極化した考えや議論は平行線を辿ります。
意見が噛み合わなくても最終的には多数決で決める事になっているので、少数側も納得したわけではなく、多数決というルールに従っているだけかもしれません。
ですが、そのやり方は相手を尊重した対等な話し合いや、自分の中で2極化した問題を扱う時には使えない事もあります。
そんな場面で力を発揮するのがソクラテス式問答です!
実際ソクラテス式問答の効果は広く知られていて、大企業の社員研修に使われたり、うつ病の治療などにも応用されているそうです。
皆さんも意識して日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
- 明確化の質問:問題の具体的なゴールは何だろう?
- 初期設定の質問:捉え方の違いや問題の大きさはどのくらいだろう?
- 前提の質問:問題について分かってないことは何だろう?
- 証拠の質問:今の答えを真実だと考えた理由は何だろう?
- 起源の質問:今の自分の考え方やアイデアはどこから得たものだろう?
- 視点の質問:他の人はこの質問にどう応えるだろう?
- 結果の質問:問題を果たしたらどんな効果があるだろう?