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社会的報酬の罠!若者ほどステータスを求めてしまう脳の仕組み

この質問に皆さんはなんと答えるでしょうか?

心理学では人間の欲求を2種類に分けて考えています。
それが内発的欲求と外発的欲求です。
- 自分が心地よくありたいと思う欲求
- 周囲の反応やフィードバックを必要としない
- 人生の価値観に基づいていることが多い
- 精神的な成長や自己実現を促す
- 内発的欲求を持つこと自体が、本質的に欲求を満たしている
- 他者との関わり/誰かを愛したい/健康/利他的な願いなど
- 名声/注目/地位/賞賛/影響力/権力/お金/支配/美しさなど
- 他者からよく思われ、肯定的なフィードバックを与えられると満たされる
- 自分だけでは満たされない
- ステータス=社会的地位に関わるものが多い
心理学の数多くの研究で分かっているのは
人の願いは、年齢、性別、性格によって多少異なるものの、基本的には同じということです。

405人の若い成人に「願いが3つ叶うとしたら?」と質問する調査をしたところ
最も多かった回答は外発的な欲求で特に男性は「権力」女性は「美」。
内発的報酬は少なく
- 幸せ13%
- 親密な人間関係12%
- 利他的な願い8%
- 自分や自分や家族の健康6%
という結果になったそうです。
今回は私達が外発的欲求を求める脳の仕組みや
若者ほどステータスを求めやすい心理になることについて解説しようと思います。
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若者ほどステータスを重視する理由と脳の発達
私たちの脳の原始的な部位に
「腹側線条体(ふくそくせんじょうたい)」と呼ばれるエリアがあります。
この腹側線条体が特に活性化するのが思春期に入った頃で
社会的報酬を経験した時だと考えられています。

腹側線条体は単体ではそれほど活動していないと考えられていますが
「やる気回路」と呼ばれる腹側淡蒼球(ふくそくたんそうきゅう)
の領域の一群の中で重要な役割を担っています。

ミシガン大学のケント・バーリッジの研究により
腹側線条体から腹側淡蒼球に信号が送られ「好き」を「やる気」に変え
欲しいものを追求する力が造られることが分かっています。
このように腹側線条体は脳の報酬を感じるネットワークの中心的存在で
あらゆる「ご褒美/報酬」に反応し
気分をよくするのに関わる重要な役割をしています。

つまり腹側線条体の主要な機能の1つはステータスへの執着と言えるのです。
10〜13歳頃になるとこの時期特有のホルモンが腹側線条体のニューロンを刺激して
特に2つの脳内物質に対する受容体を成長させます。
その二つがオキシトシンとドーパミンです。
オキシトシンは絆や仲間との繋がりを求める気持ちと関わりが深く
ドーパミンは快楽に反応します。

この2つの作用で思春期に入ると「社会的報酬」を欲するようになり
思春期に高まる社会的報酬への欲求
- 注目されたい
- 認められたい
- 賞賛されたい
- 仲間を仕切りたい
などの欲求が高まると考えられています。
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欲望を制御するエリアの発達は20代半ばまで続く
先ほど解説したように腹側線条体が信号を送り
腹側淡蒼球がステータスを求める感情や行動に影響を与えます。
腹側淡蒼球の働きは
「よくないと分かっていることへの依存」や「愛着心」などにも関わっています。
いわばアクセルのような働きをしているのです。

それに対してブレーキの働きをするのが大脳皮質の役割です。
大脳皮質は「考え」を司り「自分の好みを認識し、追求すべきかどうか判断」しています。
この腹側線条体(アクセル)と大脳皮質(ブレーキ)
の発達には時間的なギャップがあるのです。

20代半ばになってやっと脳の残りの部位は腹側線条体の成長に追いつき
大人になるにつれて思考力が高まり、欲望に対してブレーキが効くようになります。
その頃になると欲しいもの全てを追いかける欲望を抑えることができるようになるのです。
社会的報酬に付随するものまで欲しくなる
腹側線条体と腹側淡蒼球の伝達と同じように
脳では数多くの神経連絡=皮質下結合が行われていると考えられています。
バーリッジによると
こうした神経連絡により人は、自分でも意識しないうちに
様々な衝動に駆られる傾向にあるそうです。
皮質下結合が強力に活動し
- 必要以上のもの
- 高いステータスを思わせるもの
など社会的報酬に直接繋がるものだけでなく
社会的報酬に付随するものも「欲しい」と思い始めるそうです。
まとめ
脳の中で社会的報酬を求めるエリアと
それを制御するエリアの発達にタイムラグがあるという話でした。
それに加えて、脳の各部位が連絡しあって複合的に働いているという考えもご紹介しました。
昔は脳のエリアごとの役割を理解しようとする流れが強かったですが
最近ではそれに加えて、脳のエリアごとがお互いに連動して動いていることにも注目が集まっています。
さらに脳内だけではなく、筋肉や脂肪、腸内環境なども脳の働きと関連していることも注目されています。
科学には心理と脳と身体の繋がりなどまだまだ分かっていないことが多いです。