褒めるのは人間関係を構築する上で重要な行動です。
褒められた側は現金をもらった時と同じか、それ以上に脳が快感を感じます。
そんな強い影響を及ぼす「褒め」には逆効果になる場合もあり、よく無い褒め方をしてしまうと,相手を嫌な気持ちにしてしまったり、怪しまれたりとマイナスも多いです。
間違った褒め方に気をつけて、皆さんの気持ちが正確に伝わるようにしましょう。
目次
損をする褒め方/逆効果になる褒め方解説〜今すぐ辞めよう!相手からの印象を悪くする褒め方〜
せっかく仲良くなりたいのに、相手に「あなたは魅力的です」と伝えたいのに、なぜか褒めると苦笑いされるようなリアクションをされる。
そんな経験私もあります。
今回は2019年ミシガン大学やマサチューセッツ大学などが報告した「褒めの注意点」をご紹介。
各項目を見て頂ければ、やってしまいがちだけど、確かに相手にされたら嫌な褒めが目白押しです!
早速ご紹介しましょう。
感情が乗ってない褒めはやめよう!
私の場合、すっごく目上の人や、超絶美女、イケメンなど緊張する相手、もしくは全然興味の湧かない人、意見の異なる相手によくやってしまうよく無い褒め方です。
感情の乗らない褒めは、相手を騙そうとしている印象や誠意のなさが伝わってしまいあなたの印象を下げ、相手は心を閉ざしてしまいます。

ですが必要以上にオーバーリアクションもよくありません。
自然に興味が湧いたり、いいなと思ったところを褒めるのがお勧め。
考えが異なる相手を褒めるときは、相手から学べるところを探し、少しでも感情が載せられるところを探して、全体を褒めずに一部を褒めるようにしてみましょう。
自分の気持ちや、相手を見て感情が全く乗らなそうなら、むしろ褒めない方がましのようです。
極端な言葉で褒めるのはやめよう
「神」「完璧」「超絶」「絶対」「間違いなく」「信じられない」これらのワードを褒めによく使う人は気をつけましょう。
特に注意が必要なのは、自尊心(=自分の価値を認める自己評価)が低い人、自己評価の低い人を褒める時です。
自尊心の低い人の自己評価が4点ぐらいの時「4点ぐらいに見えるけど、こんな場面では5点くらい凄いね」といえば彼らも納得するでしょうが。

「君は20点だよ!20点なんだよ神神!!」なんて言った日には「私はそんな凄い人間では無い」「この人は私を褒めているけど一時的な勘違」「何か別の目的がある」など、全く逆の心理動作を発動します。
また女性に「可愛い、世界一可愛い」と言っても、ほとんどの女性は自分より可愛い女性か、目標にしている女性がいるため「世界一可愛い分けなじゃん」といった心境になりやすいです。
心理学での褒めは説得に近い面があり、真っ当な理由なくこちらの意見を押し付けても相手の心は動かないのです。

褒める側の自己満足に終わらず、しっかりと理由やストーリーも付けつつバリエーションを持たせた褒めを意識しましょう。
ですが自尊心が高く、特に外交的なタイプの人の中には、いくら大袈裟に褒めても快く受け取る方もいらっしゃるので、そんな人に出くわした時は大袈裟なくらい褒めても問題ありません。
そんな人は脳の報酬系という、報酬に反応する部分の作りが一般的な人や、内向的な人と異なっているため極端に褒めても大丈夫です。
簡単にできる事を褒めるのはやめよう
これは子供や、世代の違う人、業種や分野が違う人を褒めるときにとてもありがちな、よく無い褒めの典型と言えるパターンです。
友達が、ソースにこだわったパスタを食べさせてくれた時、麺が美味しいとか器が綺麗と褒めたら友達は「嬉しいけど少し違うんだよなー」と思うかもしれません。

スポーツでチームが凄い連携を駆使してゴールした際、得点者だけ褒めていては、褒められた選手も「チームメイトの連携が凄かったんだけどな」と感じるでしょう。
これは褒める側が、褒められる側のしている事の「難易度」を理解できていない時によく起こる「褒め」です。
「簡単な事を褒める」を回避するには、褒める人の分野をある程度理解する事も必要。
ですが全く違う分野の人や業種、どこを頑張ったのかわからない相手の場合、過去に上司とのコミニケーションの記事でも紹介した「アドバイスフレーミング」を使うのが一番です。
アドバイスフレーミング
アドバイスフレーミングはとっても簡単で、相手に「〇〇ってどれくらい難しいことなんですか?」とか「どこが一番工夫したところなんですか?」のように、アドバイスをもらうように質問する方法です。
さっきのパスタの例で言うと「このパスタ、器も綺麗で麺も美味しい!」のような素直な感想にアドバイスフレーミングを追加して
「今まで食べたパスタと違うけど、どこを一番工夫したの?」と聞いてみるのがいいでしょう。

そこで「直接イタリアまで行って、現地料理を研究したんだ。日本でこの味を再現するために食材選びからとても苦労したんだよ。特にソースは再現するのに長い時間がかかったんだ!」
と素人目には分からない苦労や工夫、難易度を教えてくれる事が多いです。
難易度が理解出来ない時は素直に分からない点を聞き直しましょう。
そしてアドバイスをもらったら必ず、相手の言葉を繰り返したり、相槌(あいずち)を打ったり、頷いたり、して共感を伝えましょう。
アイブローフラッシュ(下の写真のように眉を上げ目を開くような表情)を使ったり、話を要約したりして興味や理解したことも伝えましょう。

ここで教えてもらったことを違う業界で例え直したりできれば更に良いでしょう。
「なるほど(相槌)ソースにそんなこだわりが!(相手のキーワードを繰り返す)」
「だから日本で食べるパスタとは全然違う味がするんだね(理解を示す)」
「私も絵を描くのが趣味で、感動した風景を絵にする時は現地の雰囲気や気温、風の柔らかさまで頑張って再現したくなるよ(ジャンルを超えて例え直す)」
スポーツの得点シーンでも「さっきのゴールが生まれた一番のポイントはどこですか?」と聞けば、選手や、もしくは一緒に観戦に行っている人は喜んで教えてくれるでしょう。
アドバイスフレーミングは自分の勉強にもなり、相手も「自分のやってることに興味を持ってくれている」とダイレクトに感じる事ができます。

人は教えてあげたりアドバイスするのが大好きな生き物です。
特に部下や、後輩、子供など、自分より目下の人にアドバイスフレーミングをすると非常に嬉しそうに話してくれて、仲良くなりやすい事が多いです。
初めは、無知を晒すようで恥ずかしいかもしれませんが、アドバイスフレーミングが使えれば、相手はあなたを「自分の事をわかってくれる人」もしくは「分かろうしてくれる人」と感じるでしょう。
そしてアドバイスフレーミングで教わった努力や工夫を褒めるようにしましょう。
運とか才能は褒めないようにしよう
コントロールできる事を褒めるようにしましょう。
肌が綺麗な人、センスがある人、痩せている人、背が高い人など生まれつきと思われる事や運で得たものを褒めるのはやめましょう。
そういった人を褒める時は「工夫、努力、戦略」など彼らにコントロール可能な面を褒めましょう。

「身長が高いからその服が似合って素敵」と言うより「長身を生かしたファッションセンスが素敵」と言う方がお勧めです。
先ほどのアドバイスフレーミングがここでも使えます。
痩せていて程よく筋肉質な人がいた時に「理想的な体型で羨ましいです」と褒めるよりも、「体型を美しく保つのに何かされていますか?」と聞いてみましょう。
大抵何かされています。その努力や工夫を褒めましょう。
好きでやっている事を褒める時には注意しましょう
相手が人にやらされているのではなく、自分の意思で好きでやっている事、ハマっている事を褒める(外部報酬を与える)のはあまりお勧めしない褒めです。
特に子供に対してやってしまいがちな事です。

心理学で特に有名な、2002年デシと言う研究者がロチェスター大学の院生だった頃の実験で発見した「アンダーマイニング効果」を誘発してしまうからです。
アンダーマイニング効果は、内発的動機(=自分の意思や内面から湧き出た動機)にお金や、称賛、名誉などの外部報酬を与えると。
内発的動機が→報酬のために頑張る、外発的動機に変わってしまうという心理動作です。
子供や部下が自発的に興味をもって始めたことは、褒めたり、ご褒美やお金を与えるのは得策とはいえません。

地道に続けていること、粘り強いこと、やり抜く力を凄いと感じるといった内発的動機を刺激する褒め方がいいでしょう。
それのどこが楽しいのか、どんなやりがいがあるのか、私がするならお勧めはないかなど、これもアドバイスフレーミングで接した方が相手は嬉しい気持ちになります。
他人と比較して褒めない
「他人と比較した自慢は嫌われる」という過去の記事もありましたが、褒めも他人と比較するのはやめましょう。
他者と比べて褒めると、一時的にモチベーションは上がりますが、その気持ちは持続はしません。
競争がゴールになってしまうからです。
先ほどの内発的動機と外部報酬に似ていますね。

ですので比べるならば褒める相手の過去と比較して、成長や、努力、戦略を褒めるようにしましょう。
キャロル・S・ドゥエック のマインドセットにも通じるところがありますが、部下や子供を褒めるときにも注意が必要です。
子供のマインドセットを鍛える運動会での褒め方
運動会の徒競走であなたのお子さんが1着になったとします。
そこで「一番になって凄いねー」と周りと比べて褒めてしまっては子供に「一番以外は凄くない」「トップじゃないと意味がない」「全体のトップだった事が偉い」というイメージやメッセージまで伝えてる事になります。

この子供が来年の運動会で順位を下げれば、モチベーションは下がり、走ることに苦手意識を感じたり、走ることに距離をおこうとするかもしれません。
競争で一番になることは「目標」になっても人生の「価値」と結びついていなければあまり意味は無いと思います。
あなたがもし、自分のお子さんに「どんな事にも一生懸命取り組む」「諦めず全力を尽くす」事が大切だと伝えたい場合
「一生懸命走ったこと」「練習の成果が出た」「諦めなかった」「成長した」これらの点を褒めてみましょう。
逆に1着でも、2位と大きく差が出来たために最後手を抜いて、競争相手に敬意を示さず走ったら「最後まで一生懸命走る姿がみたかったな」と伝える方が良い場面もあるでしょう。

時には、途中で転んでしまって最下位になったとしても、そこから起き上がって一人で最後まで走り抜いたのなら「諦めない姿がみれて嬉しい、今日は運動会を見にきて本当に良かった!」と伝えるのも良い褒め方だと思います。
パートナーや子供を褒める時や、叱る時にどのように気持ちを伝えればいいか、言葉選びに悩むという方は「マーシャル・B・ローゼンバーグのNVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法」がお勧めです。
運動会に限らず、文化祭だろうが、合唱コンクールだろうが、他人との比較や結果よりも、向き合い方や努力、工夫、戦略を褒めるようにするのがお勧めです。
子供に限らず、心のあり方をしなやかにして、成長し続けるマインドを理解したい方には先ほども紹介したキャロル・S・ドゥエック のマインドセットがお勧めです。
まとめ
褒める事に大きな力があるからこそ、よくない使い方をするとマイナスに転じてしまいます。
今回の内容に気をつけて周りの人や、初対面の方とでも良好な繋がりが生まれれば幸いです。
この記事は二部構成で次回に続くのでそちらも合わせてチェックしてみてください。
まとめ
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- 感情が乗らないならむしろ褒めない方がいい
- 自尊心の低い人は特に極端に褒めないようにしよう
- アドバイスフレーミングを活用しよう
- 人のコントロールしている面を褒めよう
- 内発的動機に外発的報酬は注意が必要
- 人との比較は自慢も褒めも御法度
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