目次
感情シグナル理解してコミニケーションに活かそう!ゴッドマン式コミニケーション術
前回はボーリング・グリーン州立大学神経科学者ジャーク・パンクセップが提唱する
7つの「感情指令システム」という考えをご紹介しました。
ワシントン大学のジョン・M・ゴットマンはこれらのシグナルを
上手に発信し、相手のシグナルに関心を向けることが
様々なコミニケーションの鍵だと考えています。
今回は感情シグナルと人間関係について解説します。
ゴットマン式コミュニケーション術 ――自己診断テストでわかる改善と対策
シグナルのやりとりを観察すると人間現関係がわかる!?
ジョン・M・ゴットマンによると
離婚寸前の夫婦はお互いが発信するシグナルを
- 夫側100回中82回
- 妻側100回中50回
無視しています。
それに対して安定している夫婦は
- 夫側100回中19回
- 妻側100回中14回
とうまくいっているカップルと、そうでは無いカップルの間の
シグナルを無視する回数に大きな差が観察されます。
ゴッドマンによると相手のシグナルに対する対応は次の3種類に分けられます。
- 関心をむける
- 逆らう
- 背を向ける(無視)
人間関係を良好にするのは=関心を向けるシグナル対応です。
仲の良いカップルは10分間に100回もお互いに関心を向け
冷え切ったカップルだとこれが65回まで減少します。
夫婦関係において「相手のシグナルに逆らう」のはすぐに離婚には至りませんが
長期的には別れる確率が高いようです。
シグナルに背を向けると人間関係は崩壊する
人間関係に最も悪影響を与えるのが「相手のシグナルに背を向ける」ことのようです。
- 無視をする
- 没頭しているふりをする
などがシグナルの無視で多い対応です。
どのような関係でも無視は人間関係を壊す決定的な要因で
シグナルを無視することは相手に以下のメッセージを伝えることにもなります。
- あなたのシグナルはどうでもいい
- あなたのシグナルは迷惑だ
- あなたが興味あることに私は興味ない
- 私にはもっと重要な関心ごとがある
- シグナルに興味を向けている暇がない
- あなたのシグナルは時間を割くだけの価値がない
- あなたは私を束縛しようとするが、私はもっと自由でいたい
親子から子へのシグナルに対する無視が続くと子供への影響は大きく
親子関係での無視の影響
- 心理的な後遺症を引きずる
- ネガティブな感情を持つ
- 人間関係が上手くいかない
- 学力が低下する
- 病気がちになる
などマイナスの影響は多岐にわたると考えられています。
夫婦では
お互いのシグナルを双方で無視し合っている夫婦の方が
一方(多くは妻の側)が絶えず相手に関心を向けているのに
もう一方が無視するケースより、まだ関係が上手くようです。
シグナルを無視する夫婦の離婚は時間の問題と言えるようです。
7つの感情指令システムの違いを理解する
相手の感情シグナルに関心をむけるには
まずそれぞれのシステムがどの程度活性化していると快適に感じるか
人によって違いがあることを理解するのがおすすめです。
自分の家族やパートナー、職場の同僚などのそれぞれのシステムの活性具合と
自分との差を理解したり、自分と似ている所を見つけて共感したりすることができます。
また相手が優先したい感情システムに対して配慮したり
自分との差から妥協案を考えることにも役立ちます。
さらに自分がどのシステムが活発で
どのシステムが不活性なのかを知ることで
自分にとって快適な環境や、人生で目指したい状態など
「人生の価値」に近い指標が得られることが多いので自己分析も行ってみましょう。
また忙しさや疲労、ストレスの多寡や環境の変化など様々な要因によって
システムの活性度合いはその都度変化していることも忘れないようにしましょう。
7つのシステムがどの程度活発なのか調べるチェックテストは↓の本に掲載されています。
ゴットマン式コミュニケーション術 ――自己診断テストでわかる改善と対策
シグナルを上手く出し、相手のシグナルに関心を持って接することが大切
一度無視されたシグナルを出し直すのは上手くいっている夫婦でも20%
離婚する夫婦では0%だそうです。
全てのシグナルに対応しながら過ごすのは疲れそうで無理と感じる場合もあるでしょう。
実際
上手くいっている夫婦でも全てのシグナルにお互い反応しているわけではありません
ですが、お互い関心を向け感情シグナルを交わす回数が多いため
シグナルが受け止められる機会も多くなり良好な関係が築けているようです。
しかし、お互いの感情シグナルにいくら関心を向け合っていても
上手に応じることができないことも多いというのが現実です。
感情シグナルに関心を向け合いコミニケーションを取るには多くの要素が関係してきます。
- その人の脳がどのように感情処理するかの違い
- 育った家庭での感情の扱われ方の違い
- その人の感情コミニケーション能力
- 曖昧なシグナルや言語化されないシグナルもある
これらの違いがあるため関心だけあればコミニケーションが取れるようになるわけではありません。
お互いのシグナルを理解し、自分のシグナルを上手に伝えられるようになることこそ
コミニケーションの目標とも言えるようです。
その過程で意見の食い違いや喧嘩も起きるでしょうが
その際は「良い喧嘩/悪い喧嘩」の記事でご紹介した
リペアアテンプトが鍵になるとゴッドマンは強調しています。
お互いのシグナルの理解には「時間と努力」が必要になるようです
実際、母親は赤ちゃんのシグナルを10回中7回勘違いします。
- どうして泣いているのかわからない
- 何を求めているのかわからないなど
その中でいろいろな方法を試してお互いのシグナルについてより深く学んでいき
時間と共に関係が深まっていくようです。
私達はパートナーとして自分に合った相手を探してしまいがちです。
しかし、どんな人とも伝え方や考え方に違いがあり
それを理解し合う時間や意志がコミニケーションにおいて大切になるようです。
また最近の研究では自分の感情シグナルの出し方や
脳で起きる感情の処理についても変化や成長を行えることがわかってきました。
行動に影響を与える神経生理的なネットワーク
人間は感情を解釈したり、言語化したり、表現する方法を意識的に選べます。
それと同時に意識ではコントロールできない部分や反応もあります。
感情的な反応を処理するシステムは
- 進化の影響/遺伝的に形成されたもの
- 自分の体験や経験、個人史によるもの
- 遺伝&個人史どちらの影響も受けたもの
のどれであったとしても
私たちが抱く感情はある程度「脳の神経回路網の配線」で決まっていると考えられています。
これまでの脳研究で
脳の神経生理的なネットワークが人の行動に影響を与えることが解明されてきました。
この配線の形成が特に活発な幼少期と思春期の体験や環境が
成人後にも様々な影響を与えているとす指摘する科学者は多いです。
ですが最近になってこの関係は一方通行でないことも解明されてきたようです。
つまり私達の行動が脳の神経生理的なネットワークに影響を与えるということです。
人はいくつになっても成長できる可能性が高いことが科学的に指摘されています。
コミニケーションや人間関係も
自分を見つめトレーニングやスキルを磨いていくことで
よりよく、充実した生き方が出来るようになるとゴッドマンは書いています。
まとめ
上手くいくカップルと上手くいかないカップルの違いはどこにあるのか?
これまでは多くの心理学者がシドニー・ジェラードという方の説
「良い関係を築くカギは、自分をさらけ出すこと=心の奥に秘めた思いや体験を相手に打ち明けること」だという説を支持していたようです。
ですがジョン・M・ゴットマンの長年の研究ではそのような事実は観測されていないません。
実際重要なのは相手に関心を向けているかどうか
相手と気持ちを通わせる意志があるかということだと彼は考えています。