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プレモータム=失敗の想定で未来予測精度30%アップ!ハーバードで行われるバイアス解除テクニック
プレモータムとは
=失敗を前提に意思決定をするテクニックです。
バイアス関係の記事で解説してきたように人間は未来を予測するのが苦手な生き物です。
未来予測の専門家であっても10年先の未来予測は50%ほどしか当たりません。
- 35年ローンで家を買う決断をするか
- この人と結婚して大丈夫か
- 転職先はこの会社で大丈夫か
など私達は長期的な判断も上手く予想できないことが多いのです。
それは、人間にバイアス(思い込み・思考の偏り)があるのが大きな原因です。
今回は2000年代からハーバード・ビジネススクールなどで盛んに行われ始めた
バイアス解除テクニック「プレモータム」をご紹介します!
プレモータム:ステップ①敗北の想定
今行おうとしている選択、意思決定、なんでも構いません。
まず、今から3年後の未来を想像して
自分の選択が「完全な失敗」に終わった場面を思い描いてください。
- 家を買ったら設計が悪く住みにくい作りになっていた。
- 結婚したらパートナーが思っていたイメージと違い冷めた
- 転職したら仕事が忙しすぎてプライベートがなくなった
を考えながら、「こんなことになったら最悪だ」
と思う未来を5〜10分ほどかけて紙に書き出します。
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問題を解いて行くことで
知らない内に陥っている思い込み、判断の歪みを直し、科学的思考を学ぶことができます!
思考力改善ドリル: 批判的思考から科学的思考へ
プレモータム:ステップ②原因の探索
続いてステップ①で行った「完全な失敗」が「起きた原因」を紙に書き出します。
- 住宅会社の言いなりになって自分で確認しなかった
- 表面的な付き合いをして、深い話を避けていた
- 給料の高さを優先しすぎてその他の要素を軽視した
ここでのポイントは
「自分が普段からどんな失敗をしやすいかを考える」
ことです。
現実にありそうな原因をできるだけ多く書き出してみましょう。
原因の探索が難しい時は
原因の探索が難しい時は以下の質問に答えてみるのがおすすめです。
原因を探る質問
- 自分の選択が全て間違っていたらどうだろう?
- 「自分の選択が良い」と考えた根拠はなんだろう?
- 選択に将来性が有ると考えてた根拠はなんだろう?
- 世間体や肩書に惹かれて選択していないだろうか?
- 「選ぶ理由」が無くなったら、選択に対する判断は変わるだろうか?
- 選択することで現状に影響は出ないだろうか?
- 決断する理由が十分だと考える理由はなんだろうか?
「思考の偏り」が今想定していない自体を招かないか考えてみましょう。
プレモータム:ステップ③過去の想起
ステップ②で思いついた「原因」のプロセスを
「時系列ごとに詳しくイメージ」してみましょう。
自分の失敗の傾向や、想定できる事を考えましょう。
自分の下した決定が失敗に終わるまでの経緯を3段階ほどに分け
時間を区切りながらイメージします。
- 家を買ったら設計が悪く住みにくい作りになっていた。
「比較検討するのがめんどくさくてポストに入ってたチラシの会社にすぐ決めてしまった」
↓
「早く家を建てることと、安く済ませることを重要視しすぎた」
↓
「自分から細かい設計に意見を言わず会社側の言いなりになってしまった」
- 結婚したらパートナーが思っていたイメージと違い冷めた
「マッチングアプリで顔や職業など条件を重視しすぎた」
↓
「早く結婚したくて、この人は結婚に向いた相手なんだと思おうとしてしまった」
↓
「過去の経験から深い話題を避け、喧嘩しないように表面的に付き合ってしまった」
- 転職したら仕事が忙しすぎてプライベートがなくなった
「ともかく今の会社を辞めたくて、安易に給料の良さそうな会社の面接を決めてしまった」
↓
「面接では採用されることを重視しすぎて、業務形態や福利厚生について質問しなかった」
↓
「転職と賃金に囚われて友関係やプライベートの大切さを想定してなかった」
ここでのポイントは
「どれだけリアルに失敗の過程をイメージできるか」です。
プレモータム:ステップ④対策の考案
これまでのステップで起きた「失敗の解決策」を考えていきます。
- 家を買ったら設計が悪く住みにくい作りになっていた。
「まず家を買うか、借りるかから考え直してもいい」
「既に家を建てた人の意見を聞いたり、リサーチをもっと行ったほうがいい」
「自分が家や暮らしに求めていることを明確にしたほうがいい」
- 結婚したらパートナーが思っていたイメージと違い冷めた
「結婚に何を求めているかを明確にする」
「マッチングアプリ以外にも友人からの紹介とか出会い方も工夫しよう」
「結婚観や子供、働き方などの深い話もしたほうがいい」
- 転職したら仕事が忙しすぎてプライベートがなくなった
「転職せずに今の職場の不満を改善できないか考えてみよう」
「今の上司が2年後に退職したら?現状のまま副業をしたら?を考えてみよう」
「転職するなら賃金以外の要素をもっと考慮しないといけないな」
プレモータムについて
ペンシルベニア大学などの研究ではプレモータムを使った被験者は
未来の予測精度が平均で30%上がったと報告しています。
プレモータムを行うことで以下点に気付く人が多いようです。
プレモータムを使おう!
- 対人関係のトラブルから逃げたいだけだった
- 目先のことしか考えていなかった
- リサーチが甘かった
プレモータムを行うことで将来をリアルに思い描き
思い込みや、目先のことしか考えない判断を避けることが出来ます。
このように未来を思うことで判断力が上がる現象を心理学では
「拡張された自己」と呼びます。人間は
- 高いものを買うとき
- お金に釣られているとき
- 世間的に良いとされる大きな決断をするとき
などはバラ色の未来しか思い描かず視野が狭まることがあリます。
特定の選択肢にのみ意識が向かい
それ以外の未来の可能性に頭が行かなくなってしまうのです。
プレモータムで「最悪の未来を想定」することで
思い込みや偏った想定を減らし
- 判断
- 行動
- 対応
- 準備
などをより的確に行う助けになってくれます。
まとめ
「自信を持て!」「自分を信じろ」という言葉は聞こえはいいですが
長期的なビジョンの判断や決断を行う際にはあまり向かないようです。
一般的に「ネガティブ」だとマイナスイメージで考えられている思考法を
「思考の偏りの軽減」を目指して有効活用するのがプレモータムです。
慎重な判断が必要な時、自分の考えに偏りや見落としがないか心配な時
プレモータムを試してみるのはいかがでしょう。