発明する一部の人と、人に頼ろうとする大勢の違いは?ウィリアム・ヒッペルの社会革新仮説

発明する一部の人と、人に頼ろうとする大勢の違いは?ウィリアム・ヒッペルの社会革新仮説

 

人類と他の動物との違いは様々ですが、特徴的な違いの一つが

技術的イノベーション=物を発明できるかどうか

だと言われています!

 

道具を使うだけ、利用するだけの動物沢山います。

 

  • チンパンジーが枝でアリを釣る
  • 鳥が枝を集めて巣を作る
  • ラッコが石で貝をわる

 

 

素材を使いやすい形に変形させたりする動物もいますが

人間の発明力は全く別次元である事は言うまでも無いでしょう。

 

 

 

人類は10万年以上前からあらゆる種類の複雑な道具を使って

 

  • 衣服
  • 武器/道具

 

などを発明してきました。

 

しかし、ここで疑問が生まれます。

 

 

発明することが古くから続く人類共通の特徴だとしたら

私たちが普段、物をあまり発明したことが無いのはどうしてでしょう?

 

 

 

 

それは人間が、技術的にではなく

社会的に問題を解決しようとする社会脳が発達したから

かもしれないとする考えがあります!

 

今回オーストラリアのクイーンズランド大学心理学教授の

ウィリアム フォン・ヒッペルの社会革新仮説をご紹介します。

 

 

われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略

 

 

今回の内容を動画で解説

 

 

どうして革新者(イノベーター)が少ないのか?

 

技術イノベーションについての研究では

3年以内になんらかの製品を家で改造したり、何かをゼロから作ったことがある

と答える人は大抵5%程だという報告があるようです。

 

 

把握しておこう

 

 

この%は国や文化圏で差はあるものの10%を超えることはほとんどありません

 

新しいものを発明することが人類の特徴で、他の動物と違う点だとすると

革新者が10〜20人に一人しかいないと言うのは少なく感じませんか?

 

ウィリアム フォン・ヒッペルの仮説は

 

多くの人は問題を社会的に解決するように脳が進化している

そのため、社会性が低い人が技術的な発明をする可能性が高い

 

と言うものです。

 

社会脳が技術的な発明を妨げている!?

 

前回の記事でご紹介しましたが

 

人類は個々の能力を伸ばすよりも、協力や分業などの社会性

=チームワークを強化し、それを実現する過程で脳が進化したとする

社会脳仮説をご紹介しました。

 

社会脳仮説

 

 

さらに狩猟採取時代の人類は、集団の平等性を保つために

反支配/逆支配などの社会的チェック機を長期間使っていたのでは無いかとする考えもあります。

 

進化 アイキャッチ

 

これらのことからヒッペルは

人間は、問題を社会的に解決しようとしやすいと考えているのです。

 

 

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ホームアローンと言う映画をご存知ですか?

 

男の子が独り取り残された家に、泥棒が入ってきて

男の子は家にある様々な道具を改造したり、仕掛けを作って対抗するという映画です。

 

 

 

 

 

ホームアローンの主人公は技術的イノベーションで問題を解決しようとしますが

普通の人なら社会的な問題解決をまず考えるはずです

 

 

社会的な解決策
  • 警察に相談する
  • 近所の大人に助けを求める

 

このように、人間特有の社会脳が

社会性や社会的ネットワークで問題を解決しようとする傾向があるため

技術的なイノベーションが生まれにくいのではないか?

というのがヒッペルの考えです。

 

あまり社会的で無い人が技術的革新を生み出す?

 

一般的な人が問題解決を社会性に頼る可能性が高い。

 

そうなると「あまり社会的で無い人」の中で技術力の高い人が

技術的イノベーションを生み出していると考えられます。

 

 

あまり社会的で無い人の考え方

 

社会的でない人はこう考える?
  • 社会的な問題解決に大きな価値を感じない
  • 社会性を信頼できる解決策だと考えない
  • 技術的解決に目を向けやすい

 

などの傾向があることが予想されるのです。

 

実際、ケンブリッジ大学の発達心理学者サイモン・バロン=コーエン

自閉症の発生率が、一般人口よりも

 

 

  • 物理学者
  • エンジニア
  • 数学者

 

の家庭でより高いことを発見しました。

 

「自閉症スペクトラム障害のある方は知的能力はそれぞれ異なりますが、総じて社会的交流を苦手とする傾向が強い。」

 

さらにバロン=コーエンは自閉症レベルを数値化するための尺度作りを試みました。

 

 

体力と医療費は相関

 

 

その結果、社交性を含む自閉症スコアが文系より理系学生の間でより高く、中でも

 

  • 物理化学
  • コンピュター科学
  • 数学

 

などの分野で高いことが示されています。

 

またバロンーコーエンのチームによる研究では

オランダのアイントホーフェン=IT系の仕事が三割を占める地域と

同規模のふたつのオランダの都市であるユトレヒトとハールレムを比較した際

1000人当たりの自閉症発症率が

 

 

  • アイントホーフェン23人
  • ユトレヒト6人
  • ハールレム8人

 

と大きな差が確認されました。

 

世界的な技術イノベーションの発信点シリコンバレーでも高い率が観測されているようです。

 

技術イノベーションには男女差もあるのかも

 

ヒッペルの社会革新仮説では、さらに男女差も指摘しています。

 

これは、男性の方が女性よりも技術的な発明をする能力が高いと言うものではありません。

 

 

注目してほしい

 

 

文化的な影響や、社会の発明に対するイメージの影響などを考慮した場合であっても

 

男性と女性が同じ能力を持つ場合

 

ここにタイトル
  • 男性の方がより物に
  • 女性の方がより社会や人に

 

興味を示す傾向が認められるエビデンスが多い点を指摘しています。

 

 

HSP親密さ怖れ アイキャッチ

 

 

さらに、現代では技術的イノベーションを必要とする問題も少なく

みんなが発明の能力を持っていたとしても、それを発揮する場面が無いことも指摘しています。

 

ヒッペルの社会革新仮説は

 

ここにタイトル
  • 人間が生まれつき持つ社会性が発明する能力の邪魔になる
  • 男女差
  • 発明の必要性がない現在の状況

 

を主軸に解説され

 

人間とほかのすべての獣の生活を差別化する技術的発明を生みだしたのは──その発見についてわたしたちが感謝しなければいけないのは──どちらかといえば非社交的な人々のほうかもしれない。

ウィリアム フォン・ヒッペル. われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3069-3071). Kindle 版.

 

と著しています。

 

 

社会的イノベーションと、技術イノベーションは完全に別物ではなく

SNSなどの社会性と技術が融合したものもあります。

 

 

まとめ

 

発達障害と呼ばれる

ADHDの方や

自閉症スペクトラムの方々には社会的交流が苦手で

他者の意図を汲み取れなかったりする特徴があることが知られています。

 

ですがADHDの方には

  • 拡散的思考
  • 過集中

 

自閉症の方にも

興味を示したものを深く探求し

チームではなく単独でスキルを磨く能力の高さなどの傾向があることが分かっています。

 

これらは全て閃きや発明、技術的な成長に必要な要素です。

 

発達障害と聞くと、異常であったり

他の人と違い劣っているイメージが世の中にあるかもしれませんが。

 

彼らの持つ脳の特徴は人類に必要な要素として

進化の過程で選択的に残されてきた可能性もあると思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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