人生の3分の1は睡眠です。
しかも3分の1の睡眠の質で、残りの3分の2の人生の質も大きく左右される事がわかっています。
皆さんが興味のある睡眠、しかし巷には信じて良いのかわからないデマや、噂レベルの話が多くあります。
そこで今回は睡眠医学の観点からそれらの噂が正しいのか、科学的に解説していきたいと思います。
目次
睡眠にまつわる4つの誤解!長時間寝ることは身体に悪い!?3時間睡眠って大丈夫?
今回取り上げる勘違い・噂は次の通りです。
- 長く寝るのは良い事だ
- 努力すればショートスリーパーになれる
- 昼寝は仕事の効率を上げる
- 寝酒はよくない
これらの項目に最新の睡眠科学はどのような答えを出しているのか早速みていきましょう。
長く寝るのは良い事だ
長く寝るのは良い事ではありません。
近年、長時間睡眠が体によくないという報告が次々に出てきています。
具体的には9時間以上の睡眠は体によくありません。
2010年に16件の睡眠と健康に関する実験をレビューした報告では、長時間睡眠によって
- 癌・糖尿病・心臓疾患のリスク増加
- 脳の機能低下
- メンタルの悪化
- 太りやすくなる
などの報告が出ています。
更に、健康的な人を長時間寝させる実験や、若者を長時間寝させる実験では被験者の脳機能の低下、疲れやすくなる、鬱傾向の増加、慢性痛の悪化、体内の炎症を表すCRPの数値上昇などが報告されました。

これは人が激しいストレスに合い、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌した際の反応とよく似ています。
2016年カルフォルニア大学が72件のデーターをメタ分析した結果でも
「平均の睡眠時間が1日7〜9時間の範囲を逸脱すると体内の炎症(CRP)が激増する」という結果が出ています。
また、長時間睡眠は免疫機能もおかしくしてしまうので、風邪や、インフルエンザなどにもかかりやすくなってしまう恐れがあります。
睡眠は量より質を重視して6〜8時間を目安にしましょう。
小さいお子さんはとても長い睡眠時間が必要です。
3歳で1日10時間30分以下の睡眠の子供は、12時間寝ている3歳児より
7歳までに肥満になるリスクが45%高くなるという報告や、脳の発達、認知機能にも影響があるとする研究も数多くあります。
過眠症
さらに長時間睡眠は「過眠症」になりやすいです。
長時間睡眠をしている人は以下の状態が現れていないか確認してみてください。
- ベッドからなかなか起き上がれない
- 日中も猛烈な眠気に襲われる
- 昼寝をしても気分が改善しない
- メンタルが安定せず不安感が強い
- 常に疲労感がある
- 記憶力が低下している
睡眠問題の場合、原因が様々な場合が多く、上の項目を満たしたから過眠症だと断定することはできませんが、可能性もあります。
このブログでも紹介している、日中しっかり覚醒すること、朝日を浴びること、体温コントロールなど改善策を試してみてください。
努力すればショートスリーパーになれる
ナポレオンやエジソンの伝説のように毎日の睡眠が3〜4時間でも元気な人たちがいます。
そんなショートスリーパーに努力すればなれるのでしょうか?
結論から言うと科学的には無理です。
ショートスリパーは生体リズムに関係する「時計遺伝子」に異変があることが既に発見されており「短時間睡眠は遺伝子である」という論文が2009年学術誌「Science」に掲載されています。

しかし、遺伝子と聞くと「私もナポレオンと同じ遺伝子異変を持っているかも知れない!」と思う方もいるかも知れません。
その可能性も否定できませんが、ショートスリーパーの遺伝形質を持っているのは人口の0.5パーセントほどだそうです。
それでも無理に短眠にするとどう言うことになるのか、次のような報告があります。
短時間睡眠の恐怖
2002年サンディエゴ大学は米国がん協会と協力して100万人を6年間追跡調査する大規模な実験を行なっています。
その結果、6年後の死亡率が一番低かったのは平均値に近い7時間眠っている人たち。
それより短時間睡眠の人も、長時間睡眠の人も「6年後の死亡率が1.3倍高い」という結果が出ています。

更にサンディエゴ大学の報告では「短時間睡眠の女性は肥満度を表すBMIが高い」と報告しています。
短眠による「死亡率と肥満の増加」はスタンフォード、名古屋大学、上海交通大学でも同じような結果が出ているのでかなり信用できます。
- インスリンの分泌が悪くなり糖尿病を招く
- 食べ過ぎを抑制するホルモン「レプチン」が分泌されにくくなる
- 食欲を増すホルモン「グレリン」が多く分泌される
- 交感神経の緊張が続き高血圧になる
- うつ病、不安障害、アルコール依存、薬物依存の発症率が高まる
- アルツハイマー型認知症にかかりやすくなる
無理に短眠に挑戦して身も心もボロボロになるリスクを追うのはやめた方が良さそうです。
昼寝は仕事の効率を上げる
「昼寝は仕事お効率を上げる」これは正しいです。
現在ではGoogleやウーバーなどの有名企業も昼寝を推奨しているほどです。
NASAの研究によると一回40分の昼寝で空軍パイロットのパフォーマンスが34%改善し、集中力は100%完全復活したとの報告もあります。
ですが注意しなくてはいけない点があります。

それは現時点で昼寝の最適量はあまりわかっていないということです。
昼寝についての研究の中には1時間以上は昼寝しない方が良いという報告もあるのです。
日本の国立精神・神経医療センターらのグループは「1日1時間以上の昼寝は認知症のリスクを高める」というデータを発表しています。
更に東京大学のグループは欧州糖尿学会で「1日1時間以上の昼寝は糖尿病のリスクも高める」と発表しました。
昼寝も長すぎると良くない影響があるようで、40分を超えると夜の睡眠に影響が出るという話も。
ですので昼寝は15時までに、一回15分〜長くとも30分までで納めた方が良さそうです。
寝酒はよくない
これはもちろん良くないと思われる方が多いと思います。
私も、できるなら睡眠にアルコールを使うのは極力避けるべきだと思います。
アルコールは鎮静剤の働きをし、脳の動きを抑えるため、お酒を飲んでしまうと脳は眠っている間に行う記憶の整理や、ホルモンや免疫を整えるなどの仕事ができず睡眠の質は下がります。
もちろん大量のアルコールは睡眠の質を下げてしまうことは昔から知られていますが、度数が高くても量が少ない場合はまだましと言えるようです。

「もちろん体質にもよるが、アルコール度数の低い酒を長時間だらだら飲むより、アルコール度数の高い酒を一口含んで目を閉じるのは入眠にはいいと思われる」
とスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の所長だった西野誠治さんは著書の中でおしゃっています。
もし寝酒をするなら、度数の高い酒を一口煽るのが良いかもしれません。
まとめ
今回は睡眠についての勘違いをまとめました。
この記事から分かるように、平日夜更かしを続けて、休日に長時間睡眠するのが心身にとってもっとも良くない睡眠と言えそうです。
そうは言っても睡眠を思うようにコントロールするのは至難の技です。
近年、そんな皆さんの助けになるような研究や報告が多くありますのでまた記事にしていきたいと思います。