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アクセプタンス〜自分の感情を受け入れ行動するための必須テクニック〜
心理学で頻繁に耳にするようになったアクセプタンスとは、日本語で言うところの「受容(じゅよう)」を意味します。
自分が置かれた現実の状況や感情に気付き、そして変化や抵抗しようとせずに、受け入れるようなイメージです。
アクセプタンスができないと、過去や未来にこだわり、結果「反芻思考」の原因にもなります。
このブログではACTと言う心理療法の考えをもとに、目標や人生の価値について書いてきましたが、ACTの「A」はアクセプタンスの略です。
なぜ様々な心理療法でアクセプタンスが念頭におかれているのか。
今回はアクセプタンスの必要性やイメージを簡単にご紹介します。
思考する自己と、観察する自己
思考には、自分の意思とは関係なく勝手に考え始め、物語を作り出す「自動思考」と呼ばれる機能があります。

例えば
梅干しを見たら「梅干しの味について考えてみよう」と思うまもなく「酸っぱそう!」と自動的に思考が始まり、身体まで勝手に反応して唾液まで出てくることがあります。
その他にも
- 明日の天気予報が雨マークなのを見てテンションが下がる。
- 難しい挑戦を前にして「無理だ出来っこない」と思う。
- 素っ気ない態度に嫌われているのではと不安になる
- 相手の何気ない言葉に自分の価値が下がったように感じる
自動思考の他にも、不安や考えを巡らせ、感情や物語を作り出す。
これらが思考する自己です。
もう一つ意識して欲しいのは、その思考の動きや、自分への影響を観察する自己があることです。
- 梅干しを見て食べたところを連想して唾液がでてきたぞ
- 食べてみたい気持ちが沸いているのに気づいた
- 雨のマークを見て少し残念な気持ちになっているな
- 挑戦にプレッシャーを感じて抵抗しようとする自分がいるな
- 素っ気ない態度からネガティブな結果を予測して不安に気持ちが傾いている
と起きた事、感情にマインドフルで、思考の動きを眺めているのが観察する自己です。
この二つを意識し、分けて考えることはとても大切で、アクセプタンスを理解する鍵になります。
説明がわかりやすく、とても使いやすいのでマインドフルネスを始める最初の本におすすめです!
思考はコントロールできない
ストレスや、様々な人や考え、出来事と繋がることが増えた現代ではネガティブ方面の自動思考が急増しています。
自動的に湧き上がった思考を、自分が意識して考えついたと認識し、そのネガティブな思考と一体化(フュージョン)してしまう場面が多いです。
それでは「梅干しを見た時、酸っぱそうだと感じないようにしよう」とか「大きな挑戦を前に全く怖気付かないようになろう」といった、思考をコントロールできるかのような戦略は有効でしょうか?
これが相当難しいことは皆さんも想像できると思います。
SNSの誹謗中傷で傷ついている人に「そんなの気にしなければいい」と言うアドバイスのように実行不可能なことです。

よほどのメンタルトレーニングか修行でもしない限り、思考をコントロールすることは無理です。
コントロールできたとしても長期的にはガッカリすることが多く「思考が自動的に浮かび上がるのはどうしようもない」それが事実です。
ですが、ネガティブな思考に囚われてしまいやすい現代、ことある毎に思考に振り回されては自分の本当に求める行動や、選択から遠ざかるばかりです。
そのため、科学の世界では脱フュージョンやリプレイザル、セルフコンパッション、瞑想や認知行動療法など様々な対策が編み出されました。
大抵どのテクニックも思考をコントロールしようとせず、まずは「思考する自分」が思いついた「感情や物語」を、「観察する自分」で「ありのままに受け入れる」ことがスタートになるわけです。
アクセプタンスのイメージ
心理療法でアクセプタンスの対象になるのはネガティブイメージが多いです。
アクセプタンスのイメージは感情に対して
- そのままにする
- 思考や感情を受け入れるスペースを作る
- 感情の空間を広げる
- 抵抗するのをやめる
- 闘うのをやめる
- 共存する
- 詳しいトレーニング方法は別の記事でご紹介します!
アクセプタンスではこれらを意識して、ネガティブな感情を否定したり、戦ったりせずに、居場所を作るようにします。
例えるなら、ずっと不安を手に持っていては、作業をすることも本を読むこともできませし、腕も疲れて肩も凝ります。

その手に持っていた不安を座って膝の上に置けば手を使った作業ができるようになりますし、不必要に疲れることもありません。
ですが不安はなくならず、膝の上にあり続けます。
アクセプタンスの受容する精神は、不安やネガティブな感情は消そうとしたり、目を逸らしたり、戦ったりすると逆に増大してしまうことが分かっているからこその対処なのです。
回転寿司のイメージ
マーストリヒト大学はアクセプタンスのイメージを回転寿司に例えています。
回転寿司ではいろいろな皿が流れてきます。
回転寿司のイメージ
- 好きなネタが乗った皿
- 嫌いなネタが乗った皿
- 好きでも嫌いでもないネタが載ったさら
あなたは好きな皿が回ってきたら全てとることはしませんし、嫌いな皿にいちいちリアクションをすることなく、ただ席から寿司が流れるのを見つめることができます。
流れてきた皿の内容に一喜一憂せずに、回転する皿をあるがままに回し続ける。
これが感情をアクセプタンスしあるがままにさせる状態に近いです。
ネガティブイメージと行動
皆さんも実感があると思いますが、脳はネガティブなイメージや、経験、体験の方に注意が向くように進化しています。
脳は私たちに注意を促すために、ネガティブな感情を作り出し、警戒を促します。
それが現代のストレスや不安の多い社会では過剰になってしまい、常に警報が鳴り続け不安に苛まれる状態が生まれやすいです。

例えば、目の前をノロノロ走る車にイライラしたとします。
イライラする思考に囚われて、煽り運転をしたり、無理に追い越そうとすれば事故やトラブルの元になります。
イライラする気持ちをアクセプタンスして、冷静に行動し、追い抜いたところで目的地までの到着時間は3分も変わらない事に気付くべきです。

または、人にひどいことを言われたとします。
あなたは酷く傷つき、自尊心が低下してしまっています。
その悲しみを紛らわすために、買い物、やけ食い、飲酒喫煙などの行動をしていもあまり良いことは起きなさそうです。
悲しみをアクセプタンスし、セルフコンパッションに取り組んでみたり、運動をしてみたり、中立な第三者に相談してみたり、その人の言葉次第で自分の価値が変動しない事実に気付けた方が良いはずです。

アクセプタンスは、例のようなイライラや悲しみを消そうとするのではなく、イライラや悲しみを感じていても、その思考に従って行動する必要はない事を気づかせてくれます。
アクセプタンスはネガティブ思考や不安を受け入れ、その思考があくまでただの「思考」である事に気付き、行動や事実と区別する事を目指しています。
そして思考のせいで生まれていた不安やストレス、それらに抗う気持ちに向いていたエネルギーを、人生を充実させる行動に向けるのです。
まとめ
今回はアクセプタンスのイメージ、ネガティブな感情を受け入れることの必要性について、少し抽象的に解説をしました。
アクセプタンスは過度な興奮や、プラスのポジティブな感情にも行うものですが、日常生活ではネガティブやストレスに対して実践する場合が多いので、今回のタイトルはネガティブにしました。
これからはアクセプタンスを鍛える方法や、瞑想とアクセプタンスを組み合わせた方法など実践的な面にも触れていきます。
トレーニング実践前のウォーミングアップとして今回の記事を読んで頂けると幸いです。
まとめ
- アクセプタンスは感情や思考の受容
- 思考は自分の意思とは関係なく浮かんでくる、自動思考を意識する
- 自動思考に対して、観察する自分を意識する
- 自動思考で浮かんだネガティブ思考を観察する
- 感情を観察し居場所を作りあるがままにさせるイメージ
- 思考と行動を分けることができる事に気づく