皆さん感情的になって言い過ぎてしまったり、緊張し過ぎて焦ってミスしたり、頭に血が上って必要ないものまで買ってしまった、そんな経験ありませんか?
普段なら適切に判断できる事でも、感情にとらわれてしまった状態では制御するのは至難(しなん)の技です。
私達はどうして衝動的に行動してしまうのでしょうか?
今回は人間の思考の捉え方や思考と行動が一体化していまう「フュージョン」について説明します。
感情や衝動に振り回されることが多い人は必見です。
感情・思考と一体化してしまうフージョンの解説/後悔する行動はここから生まれる
「フュージョン」とは何かが混ざり合い混合する事を言います。
心理学で言う「フュージョン」とは「感情・思考」と「それが指し示す物(思考と実際の出来事)」が混ざり合った状態です。
- ミスをして自分は無能だという思考になり、本当に自分には価値が無いと思い詰める。
- 腹を立て相手が全て悪いという思考になり、本当に相手に手をあげてしまった。
- 買い物でどの服も自分に必要だという思考になり、必要以上に買ってしまった。
- ネットニュースに腹を立てて、実際にその人の悪口を言ったり、匿名で攻撃する文章を書いた。
- お酒を飲んでいい気分になり、大丈夫だろうと車を運転してしまった。
- 孫が突然助けを求めてきて不安に駆られ、数百万円をすぐに振り込んだ
これらの判断や行動は「フュージョン=思考と実際の出来事が混ざり合った状態」で行われています。
この「フュージョン状態の判断例」は実際に起こりうる事で、私達も近い経験があると思います。
感情や思考と一体化してしまうと、客観的にみたらリスクの大きすぎる、取り返しのつかないような行動に駆り立てられる場合もあります。
「フュージョン」の例で見た通り、人は「感情・思考」を信じ込む事がとても多いようです。
「フュージョン状態の判断例」を見聞きした時、「よく考えずに行動して馬鹿だ」「あと先考えないのか」「私はそんな判断はしない」
と思う方もいらっしゃると思いますが、感情や思考とフュージョンし判断を誤ることは誰にでもあるのです。
「フュージョン」している時の判断は、自分の中では正当化されたり、制御やコントロールが非常に難しい状態にあります。
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なぜ感情・思考に取り憑かれるのか
この梅干しの画像をしばらく眺めてみてください、ちなみにこの梅干しはとっても酸っぱいですが、ほのかにカツオの出汁が効いていて、シソの風味も豊です。
今口の中に唾液が出た方もいるかもしれませんし、梅干しを食べた過去を思い出したり、食べた時のイメージが膨らんだ方もいると思います。
梅干しを食べたわけでは無いのに、私達の体は梅干しを食べた時を想定したかのように反応します。
これは「感情や思考」の一例ですが、心理学によると実際に私達は「感情や思考」を以下のように捉える場合が多いようです。
- 本当に起こった事のように感じる
- 真実だと信じ込む
- 真剣に捉えて注意を向ける
- 命令と考えて自動的にそれに従う・アドバイスに従う
- 脅迫と捉え取り除く必要を感じる
今回は梅干で体が反応を示しましたが「不安」や「苛立ち」「後悔」「無力感」などの感情とフュージョンし続けていても体は反応します。
常にプレッシャーや痛みの反応を起こし続けそれがストレスとなります。
昨日あった嫌な事を、何度も繰り返し思い出しその度に嫌な気持ちになってしまうのです。
この繰り返し思い出す状態を反芻性思考(はんすうせいしこう)と呼びます。
イェール大学の心理学者Susan Nolen-Hoeksema氏が行った研究では、「反芻性思考」の強い人は落ち込みやすく、ストレスを感じると無気力状態に陥りやすい傾向があるとわかったそうです。
反芻性思考はそのほか様々な不安障害や鬱との関連が報告されており、頻度の高い方は注意が必要です。
感情・思想はコントロールできると言う幻想
感情をコントロールするテクニックは多くありますがそれは短期的なものが多いです。
現代も心理学や、心理療法では「行動」を改善する事で副次的に「感情や思考」を改善しようとする試みがメインです。
ですが、私達の生きる社会では「やれ!」「気にするな」「落ち着け」「しっかりしろ」など
感情や思考をスイッチのようにコントロールできるかのような言葉が多く使われています。
そこで私達は「感情はコントロールできなくてはいけない」と思い込まされるわけです。
ですがそれは大きな勘違いで、感情はコントロールしよう、忘れよう、気にしないようにしようとすればするほど反対に強くなっていく事が研究で実証されています。
ダニエルウェグナー皮肉過程理論(白熊のリバウンド効果)Wegner, D. M., Schneider, D. J., Carter, S. R., & White, T. L. (1987). Paradoxical effects of thought suppression. Journal of Personality and Social Psychology, 53(1), 5–13.https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2F0022-3514.53.1.5
また、子供が感情のコントロールが下手で、大人は感情のコントロールが上手いというイメージも完全にそうだとは言い切れません。
子供は感情的に泣いたり、叫んだり、暴れたりしますが。
大人はそうしない代わりに、お酒やタバコ、薬やギャンブル、買い物、暴食などデメリットの多い発散方法を持っているだけで、上手く感情をコントロールできているわけではありません。
実際に世界規模での精神疾患の患者は先進国を中心に増え続けています。
ネガティブな、辛い感情等とフュージョンしてしまった時の対応は大人にも必要とされているのです。
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解決策として
思考や感情とフュージョンしてしまうと、感情的な行動が増えてしまう、ネガティブな気持ちに苛まれる。
しかし、感情や思考は簡単にはコントロールできない。
ではどうすればいいのでしょうか?
そんな私達に心理学や心理療法が示してくれる解決策の一つは「脱フュージョン」です!
脱フュージョンを行う事で感情や思考にとらわれていた状態を脱し、適切な距離をとる事ができます。
感情と距離を置く事ができれば、判断を誤り大きなミスや、取り返しのつかない行動をとることも減り、自己否定的なイメージや、嫌な事を考え続ける状態から脱しやすくなります。
瞑想やマインドフルネスをする時も感情の観察がしやすくなります。
また、脳において感情をコントロールする「前頭葉」や、「逃げろ!戦え!」などの指示を出しストレスや恐怖を作り出す「扁桃体」の状態を改善する方法として瞑想やマインドフルネスを紹介しています。
説明がわかりやすく、とても使いやすいのでマインドフルネスを始める最初の本におすすめです!
マインドフルネスであなたらしく -「マインドフルネスで不安と向き合う」ワークブック-
まとめ
今回は「感情・思考」と「それが指し示す物」が一体化してしまうフュージョンについて解説しました。
思考や感情とのフュージョン時の判断の危険性や、ネガティブな考えとフュージョンしてしまい鬱や精神疾患のリスクが上がる反芻性思考に陥る危険性もご紹介してきました。
これらの問題に対して時解決策が準備されているのが現代です、とてもありがたい事だと思います。
是非脱フュージョンのテクニックもチェックしてみてください。
まとめ
- フュージョン状態では大きな判断ミスが起こりやすく、それは誰にでも起こる。
- 思考や感情は体にも影響を及ぼす、反芻性思考は精神疾患の入り口
- 感情は押し殺すと逆に強くなる、コントロールできるという幻想がある
- 脱フュージョンなどのテクニックで感情と距離を置く事ができる
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