目次
簡単にできるアクセプタンストレーニング法
前回はアクセプタンスのイメージについて解説しました。
簡単にまとめると
- 脳は自動的に思考を作り出す
- 自動的に生まれた思考を観察する思考も別にある
- 自動的に生まれた思考と戦ったり囚われたりせず
- ありのままに観察して受け入れる。
まとめると簡単なようですが、実際にやってみると初めは難しく感じるかもしれません。
今回はアクセプタンスを鍛える方法を具体的に紹介していきます。
氷を使ったトレーニング
セルフコンパッションの著者:クリスティーネフさんが推奨するアクセプタンストレーニング方法です。
前回の記事でも梅干しや、レモンを見た時の自動思考の例を出しました。
今回は氷を使って直接身体に訴えかけ、生まれた思考を受容する面白いトレーニング法です。

氷の冷たさがネガティブ感情だと思って、それに対する自動思考を観察しあるがままにしていくイメージで行ってください。
実際にネガティブな感情に囚われてからアクセプタンスを実践しようとするのは難しいものです。
アクセプタンストレーニングとして行い感覚を掴んでおくのにとてもおすすめです。
①氷を持つ
氷を1、2個手に掴んで3分ほど持ちましょう。
②受け入れたくないと感じる思考を観察する
氷をつかんで1分もすれば
- 冷たすぎる
- 離したい
- 辞めたい
- 無意味だ
- 諦めたい
といった自動思考が必ず浮かんできます。
まずはその思考に気付きましょう。

「氷の冷たさから逃れたい」と願望が生み出した自動思考を観察する時、次のことも自覚してみましょう。
- この思考は、今の瞬間に心に浮かんでいる単なる思考(自動思考)
- この思考に基づいて行動する必要はない
- この思考をどう処理するかは自分次第
前回紹介した脱フュージョンに近い思考です。
思考と行動を別にすることができることを意識してみましょう。
③身体の反応に意識を向ける
先ほどまでは頭に浮かんだ思考、言葉や物語、願望に意識を向けましたが、このステップでは身体に注目しましょう。
- 氷の冷たさはどこで感じているか
- 手のひらのどの部分がどんな反応をしているか
- 手のひら以外で何か変わったように感じるところはあるか
などです。
身体が氷から、どのような影響を受けているか観察しましょう。
④もう一度思考を観察する
身体に向けていた意識を、また思考に戻しましょう。
不快な感情があるか観察してみましょう。
先程と違った感情か、先程と同じなら感情は大きくなっているか、小さくなっているか観察しましょう。

ステップ②で行ったように、ネガティブな感情を単なる自暴思考、脳が作り出した働きとして観察してみましょう。
感情を軽く扱うと言うことではありません。
ありのままに観察し、感情は行動とは別である事実を感じましょう。
⑤氷を手放し評価してみる
氷を手放し、このトレーニングで何に気づいたか考えてみましょう。
- 浮かんできた思考の種類
- 氷を持つ事に抵抗したい気持ちがあったか
- その抵抗したい気持ちをどのように対処したか
- 抵抗したい思考を受け入れたまま氷を持ち続けることが可能だったか
- トレーニングから学べること
その瞬間に起きる物事をそのままに認識すること、起きるままにまかせることを意識出来たらアクセプタンスの感覚や、能力が向上していると考えていいと思います。
この氷を使ったアクセプタンスの原理さえわかれば、家でお風呂に入った時、めんどくさい気持ちが沸いた時、日課のランニング中につかれ始めた時など日常の様々な場面で使えそうです。
アクセプタンスが上達すれば
アクセプタンスが上達すれば次のような場面で役に立ちます。
- 思考をあるがままにさせて行動できる
- 感情や思考に任せない判断ができる
このようなネガティブな思考は大抵、状況が変化する時、現状が変わりそうな時に発生します。
- 英会話を習いたいけど下手な英語を聴かれるのは恥ずかしいと感じる
- 友達を作りたいけどありのままの自分は受け入れられないように感じる
- ジムに通いたいけどどうせ挫折すると心の声がする
- 資格の勉強をしたいけど何の意味があるんだという思考が生まれる
あなたが新しいチャレンジをしようとした時「どうせ上手くいかない」「失敗する」「笑い物になるだけだ」などの自動思考が生まれた場合も、そのネガティブな思考をありのままにさせ行動と区別することができます。
ACTでは「こころよ忠告をありがとう!」と自動思考にお礼を言うもの効果的だと言われています。

禁煙をしたい時、ダイエット中、衝動買いを辞めたい時それらの感情を押さえ込もうとせずにアクセプタンスをするのが効果的です。
実際にノースウェスタン大学の実験では参加者にアクセプタンスのトレーニングを行ったところ、
- ストレスによる食べ過ぎが別グループにくらべて60%減少
- ムダな買い物が別グループにくらべて50%減少
という結果を報告しています。
そしてアクセプタンスが上手くいかず、思考や感情に流された行動をとってしまった時は「そんなこともあるよね!ドンマイ」と自分を労い(セルフコンパッション)ましょう!
アクセプタンスの使い分け
自動思考をあるがままに受け入れて行動しようと言うと、人によっては「感情を無視している」とか「頑張りすぎて鬱になりそう」と感じる方もいらっしゃいます。
おっしゃる通り、実際に思考の言うことを聞いて感情にしたがって行動したほうがいい場面も多くあります。

例えば気温が高くて熱中症になりそうな時「この暑さに対する苦しみを受け入れて行動を続けよう」なんて考えず、思考の警告に従って早く涼しいところで水分補給したほうが良いです。
またブラック企業や、学校で酷く虐められている時などに「辛い感情を受け入れて働こう、登校を続けよう」と考えるのはとても危険です。
そこでACTが活用するのが「価値に基づいた行動」です。
ブラック企業で働き続ける事に、本当に自分が望む人生の「価値」があるの考えてみましょう。
学校でのいじめがひどい時も、学ぶ方法や場所は他にもあるが、ここで学び続けることで自分の人生で大切にしている「価値」が損なわれないかなどで判断します。

自動思考は現代では過剰にネガティブになりやすく、自己批判などが湧いて来やすくなっています。
アクセプタンスは感情の無視ではなく、自分が本当に望む人生に舵を切ろうとした時などに現れる不安や自己否定的な感情を受け入れ、人生をより充実させる行動へ向かうために有効な方法です。
もちろんアクセプタンスをしてからストレス対策をする、趣味や余暇を楽しむのもいいですね。
まとめ
人生の幸福度を高めるには、暇なときはちゃんとリラックスし、長期目標とは別に短期的な快楽や目先の欲望を満たすことも大切です。
そして、重要なのはバランスです。
現代は高カロリーで満足できる食品や、刺激的な情報、過度なストレスに囲まれて生活している方がほとんどだと思います。
それらの刺激による自動思考をアクセプタンスして行動をしたほうが、長期的に良い結果になりやすいと考えています。
まとめ
- 氷の冷たさでアクセプタンスのトレーニングができる
- 思考や身体への影響を観察しあるがままにさせる
- 思考と行動を区別できることを学ぶ
- 思考に従うかは人生の価値を指標にする