目次
あなたも思い込んでる!特に気を付けたいバイアス前編
前回はバイアスについての基本的な解説と、バイアスから逃れる方法=デバイアスには「バイアスについて知り自分が当てはまってないか考えること」が有効だと解説しました。
そこで今回は60〜80種類以上有ると言われているバイアスの中から、特に皆さんの不幸や低評価に直結するバイアスをご紹介します。
これを知っておくと考えや行動に極端な思い込みや、偏りが減り、人間間系が円滑になったり、チャンスを逃しにくくなったり、良い選択を出来る機会が増えると思います。
権利への執念バイアス
これは「自分が信じているものは相手も信じなくてはいけない」と感じるバイアスです。
- これは常識だから皆んなが知ってて当たり前
- 自分が信じているものが真実だと感じる
- 女は〇〇するもので、男は〇〇するものだ
- 整形は良くないことだ
- 宗教やスピリチュアルなものへの信仰を他者に強要する
極端な例で例えると
「自分はうどんよりラーメンの方が好きだから、この世界ではうどんよりラーメンの方が食べ物として上だと皆んな認めるべきだ!」と思い込み、周りに強要するようなものです。
主観的な事実を、客観的な事実と混同してしまうバイアスです。
このバイアスを避けるには、まず自分の考えに客観性があるか確認することが大切です。
客観性の確認
- 好み、感覚や直感でないか確認
- 想像や感情的な意見でないか確認
- エビデンス(根拠)はあるのか確認
- ソクラテス式問答で自問
ソクラテス式問答を自分に行ったり、客観的な事実と、主観的または個人的な事実を分けて考えるように心がけましょう。
公正世界信念/成果バイアス
このブログでも何度かご紹介した「公正世界信念」も厄介なバイアスです。
これは「人がしたことはそれに伴った結果が帰ってくる」と思い込むバイアスです。
日本語で言うと「因果応報」が当てはまります。
- 駄目な奴は努力が足りない
- 善は報われ、悪は罰せられる
- 失敗した人は、失敗に相応しい悪いことをしている
- 努力を続ければいつかは成功する
- ずっと1つの事を続けていればいつか大成する
さらに社会心理学者のマーク・アーリックの調査で明らかになったのは
私達は「過程より、結果を過度に強調して評価してしまう=成果バイアス」というバイアスに囚われやすいということです。
これらのバイアスは「不快な現実に対する対処」として、世界を分かりやすく秩序立って理解し、深く考える手間を省き、脳の負担を減らすバイアスです。
⬇特におすすめ!2020年10月に出た最新のクリティカルシンキング=批判的思考の本です
問題を解いて行くことで
知らない内に陥っている思い込み、判断の歪みを直し、科学的思考を学ぶことができます!
思考力改善ドリル: 批判的思考から科学的思考へ
悪い事をしてないのにイメージダウン
あなたが、痴漢や万引き犯と間違われて大勢の前でひと騒ぎ起きたとします。
例え貴方が無実であっても、公正世界信念が強まっている人達から見ると
「疑われる人は、何かそれに相応しい行いをしたから疑われた=火の無いところに煙は立たない」と理解されてしまうのです。
冤罪だった人、コロナに感染してしまった人、何かの被害にあった人に対して
と思い込むバイアスが強まっているからです。
公正世界信念や成果バイアスが強まると、問題や結果の状況的要因を見過ごしがちになり、認識が現実と異なる、偏ったものになるリスクが高まります。
問題自体の認識が偏るため、問題解決が遠ざかるのです。
実際は突然事故に遭ったり、大病が判明したり、明日天災に見舞われるかもしれません。
コントロールできない状況的要因や不幸、不公平なことは誰にでも起こりえます。
他人に対しては憶測で断定せずに、状況的要因を考慮した判断を心がけ
自分に対しては公正な世界を信じて生きるより、不公平なこの世界をどのような戦略や工夫で生きていくかを考えてみましょう。
知ってるつもり 無知の科学 (早川書房)
内集団バイアス
これは「自分が所属する集団や好みが似ている人を過大評価する」バイアスです。
- 自分の国は他国に比べて優れていて素晴らしい
- 〇〇好きに悪い人はいない
- 自分の所属する集団以外は能力が低い
このバイアスで多くの企業や団体が崩壊していきました。
ビジネスの世界で有名なユダヤ系オーストラリア人のピーター・ファーディナンド・ドラッカーは「顧客より顧客じゃない人に着目しろ」と言う教えを説いています。
内集団をより発展させるためには
- 視野を外部集団に向ける
- 内集団を指示していない人達の意見を大切にする
- 内集団の評価の枠組みを客観的な物にする
これらがとても大切なようです。
P.F.ドラッカー (著)マネジメント 上―課題・責任・実践
内集団バイアスを克服したコカ・コーラ
コカ・コーラのCEOを務めたロベルト・ゴイズエタは就任まもない頃、上級副社長たちとの会合に出席しました。
そこでゴイズエタが目にしたのは、コカ・コーラが全世界のソフトドリンク市場で45%のシェアを獲得したといって、浮かれ騒いでいる経営陣の姿でした。
その時コカ・コーラの経営は安定しており、ほとんんどの経営陣は2〜3年で株主価値を5〜10%ほど高めれば十分だと考えていたのです。
それを見たゴイズエタは「何を持って成長とするのか」という考えに異議を唱え、3つの質問をぶつけました。
ゴイズエタ3つの質問
- 人間の一日の水分摂取量はどれだけか?
- 世界の人口は?
そして
- ソフトドリンク市場ではなく、飲料市場全体で見た場合のシェアは何%か?
3つめの質問の答えを調べた結果、コカ・コーラのシェアは僅か2%でした。
コカ・コーラの経営陣はゴイズエタの質問により内集団バイアスを軽減し、正確な市場観を持ち、地位に甘んじていたこと、自分たちが思っているほど安泰ではないことに気づいたのです。
結果シェアを獲得する余地が大幅に拡大し、そこからコカ・コーラは戦略を劇的に転換し驚異的な成長を見せました。
1981年43億ドルだった時価総額は、ゴイズエタが亡くなる1997年には1520億ドルにまで成長を遂げたのです。
組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
過度の一般化バイアス
これは「ある場面で通じる上手く行ったルールを全てに当てはめようとする」バイアスです。
ルール、常識、伝統など、これからもそれが良いんだと強く思い込んでしまい
思考の柔軟性や適応能力が低下し、大きなチャンスや成長の機会を逃す原因になります。
便利な新商品や、新しい考えが出ているのに「やっぱり自分には昔ながらのこれが良い」と思っている方は要注意です。
対応策としては
- ルールや常識、伝統が生まれた理由を考える
- それらが上手く行った状況と、現在の状況の違いを考える
- 状況や環境の変化を考慮する
- 成功体験の呪縛に囚われていないか考える
違うことを試すのはいつでも抵抗があると思いますが、全部変えないまでも少し変化や工夫を加えたり、今よりよくなる方法を探す、他人のアドバイスに耳を傾けることを心がけたいです。
ダニングクルーガー効果
これは「自分は能力が高い」と思い込むバイアスです。
実験で分かっているダニングクルーガー効果の面白い特徴は「能力が低い人ほど、自分は能力が高いと思い込む傾向が強い」ことです。
- 面白くない人ほど大きな声でしつこくボケる
- 皆な馬鹿ばっかりでしょうがないと感じる
- ブサイクほど自分は割といけてると思っている
能力の低い人は客観性や知的謙遜レベルが低い傾向が示唆されていることも要因の一つだと考えられます。
ムダに悩まない理想の自分になれる 超客観力
知的謙遜を鍛える
知的謙遜(ちてきけんそん)は自分で鍛えることができる、最近特に注目されている能力の一つです。
知的謙遜ができる人は、成長する伸び代が大きく、Googleの人事採用でも重要視されています。
知的謙遜はソクラテスの哲学の出発点にある考え「無知の知=知らないことを自覚する」という考えに近いです。
知的謙遜は主に次の3つの要素から構成されています。
- 知識や情報をエゴと切り離して考えられるか
- 立場を柔軟に変えることができるか
- 他人の視点を尊敬することができるか
知的謙遜レベルの高い人ほど成長し、バイアスにも囚われにくいことが分かっています。
知的謙遜の鍛え方なども今後紹介していこうと思っています。
まとめ
バイアスは多少あったほうが生活しやすいですし、思考も円滑にできるメリットがあります。
しかし、今回や次回紹介するようなバイアスが過度に高まっている人が、端から見てどのように映るか、そんな人になりたいと思うかは少し考えものです。
後悔の少ない選択やチャンス、柔軟な思考を妨げるバイアスを知ってデバイアスしてみましょう。
まとめ
- 自分の信じていることは相手も信じるべきだと思い込む
- 世界は公正で善悪にはそれに相応しい行動や報いがあると思い込む
- 自分たちの集団を好み、能力が高いと思い込む
- 一回うまく行った事を全てのルールに当てはめようと思う
- 自分は能力が高いと思い込む
- 客観性を高める知的謙遜を鍛えるのがおすすめ