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注目の能力「知的謙遜」を鍛える方法!
前回の記事では、近年注目されている「知的謙遜」という能力に様々なメリットがあることをご紹介しました。
知的謙遜が強い人ほど「成長/判断能力/人間関係」などが強く良好なものになることがわかり始めています。
今回は知的謙遜を鍛える方法や注意点を解説しようと思います。
知的謙遜を高める:ティーチング
ブラウン大学はティーチング=「自分の知識を他人に教えてみる」方法で知識の限界を知ることが出来ると報告しています。
自分が得意だと思っている分野を選び、友人や親、誰でもいいので説明してみましょう。
その得意分野の基本的なことについて改めて解説するのがおすすめです。

説明の際、以下のポイントに注目してみましょう
- 内容が上手く言葉にできないところは無かったか
- 説明によどみ、口ごもったところは無かったか
- 相手の質問に正確に答えられたか
これらの瞬間が知的謙遜を育てるチャンスです。
上手く説明できなかった瞬間に意識を向け、その事実を受け入れるようにしてみましょう。
恥ずかしいかもしれませんが、理解が曖昧で上手く説明出来なかったところは、はぐらかさずに分からないと認めましょう。

初めは自分の知識が思っていたより狭いことに悲しくなったり、自分を責めてしまうかもしれませんが、どんな専門家でも同じ様なことが起こるので大丈夫です。
ティーチング後に自己批判が強く出る人はセルフコンパッションで自分を労るのがおすすめです。
ティーチングで自分の知識の限界を知り、それを受け入れる事で知的謙遜が鍛えられます。
知的謙遜を鍛える:イフ思考
知的謙遜では「相手の意見を尊敬する態度を養う」ことも重要です。
自分の意見に固執せず、相手の意見を受け入れることで客観性や判断力が養われ、広い視点や成長が期待できます。

心理学では昔から
「他人へのアドバイスは上手いのに、自分の悩みは上手く解決できない」=ソロモンのパラドックスと呼ばれる現象が確認されています。
知的謙遜の要素でもある=他人の意見を尊重したり、他人目線で思考することはとても大切な能力なのです。

他者の目線で「的確な判断を下す、客観性が増す方法」で有名なのはウォルター大学の実験です。
この実験では被験者に以下の2パターンのシナリオを思い描く様に指示しました。
ウォルター大学の実験
- 自分の身に対人トラブルが起きたシーン
- 友人の身に対人トラブルが起きたシーン
結果「友人のトラブルを想像したグループ」が明らかに冷静で総合的な判断をする確率が高くなっていたのです。
研究チームは、他人に向けて話す様子を想像するだけで思い込みが減り、より賢明に問題を対処できると報告しています。

知的謙遜が問われる場面や、客観性が必要な状況では、頭の中に友人や尊敬する人、歴史上の偉人、アニメや漫画のキャラクターなどを思い浮かべ。
- この人物にアドバイスするとしたらなんと声をかけるか
- この人物だったら目の前の問題をどう考えるだろう
と考える事で、自分の考えに固執せず、客観的な判断ができる可能性が高まり、相手の意見を尊重する知的謙遜も養われます。
情報源を複数化する
自分に都合の良い情報だけを集める「確証バイアス」のように、情報を一本化していると認識が偏り知的謙遜が育まれにくいです。
特に最近のネットニュースやSNSでは「あなたにおすすめの記事」や「おすすめのユーザー」など、AIが閲覧傾向を予測し情報を薦めてくるので、情報の偏りが生じやすくなっています。

ネットや本、新聞、意見の異なる相手との会話などを意識的に行なってみましょう。
情報と接するときのポイント
- 自分が信じる情報や知識の不完全さ、限界を意識する
- 相手の意見の良い点を見つける
この二つがポイントです。
自分と違う意見に苛立ったり、どう対応して良いか迷う方は、次の質問テクニックを参考にしてください。
知的謙遜を鍛える:質問テクニック
知的謙遜を鍛えるのに役立つ質問テクニックをご紹介します。
この質問は自問にも使えますが、投げかける事で相手に知的謙遜の意識を持たせることもできます。
最良の質問
先ほどもご紹介しましたが、自分と違う意見や情報に出会ったとき、その意見を尊重しろと言われても難しく感じる時があります。
そんな時は、情報の全てを尊敬できないまでも、異なる意見や情報の中で「最良のポイント」を探すようにしてみましょう。

相手の意見を尊重する姿勢が養われ、反対意見からの学びや成長につながります。
- 反対意見「筋トレは体に悪い」
最良のポイント「筋トレは身体に良いと思っているが、確かに私が知らない筋トレの逆効果やリスクあるのかもしれない。改めてリスク面を意識し調べる機会を与えてくれた!」
- 反対意見「結婚なんてしても幸せにならない」
最良のポイント「私は将来結婚したいが、確かに結婚をしたら無条件に幸せになる訳ではないな。自分に合うパートナーの見つけ方や、夫婦のコミニケーション方法を調べてみよう!」
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反証の質問
反証の質問は、普段から自分自身の考えに対して「反対の意見や反対の見方」で考えてみる方法です。
- 「私たちの会社は上手く行って安定している」
反証の質問「外部の目線になって、私達の会社をどうやって潰すか考えてみよう!そこから見直す点が見つかるかも」
- 「素晴らしいスケジュールを立てたぞ!」
反証の質問「実はスケジュールが上手くいできていないとしたら?どこに見落としがあるだろう?」
- 「彼女との関係は最高だ!」
反証の質問「もしそう思っているのが俺だけだったら?彼女はどこに不満を感じているだろう?」
上手く行っている、完璧だと感じているもに反証の質問を使ってみましょう。

より複数の考え方に意識が向き、利点や問題点を再評価できます。
柔軟に立場を変えたり、限界や不完全生を受け入れる知的謙遜の意識も養われます。
対比の質問
対比の質問は、問題や状況について考える時に、「今と過去/自分と他人」など2つの物を比較して考える質問です。
- 「今まで上手く行っていた事が、急に駄目になった、今までとどこが違うのだろう?」
- 「漫画の主人公の行動に感動した、こんな気持ちは過去にも経験したことがなかっただろうか?」
- 「このパターンを過去にも体験したことはなかっただろうか?」
対比の質問も自分に新たな視点や考え方を意識させ、客観性を高め、自分の立場や知識に固執しない知的謙遜の意識を高めてくれます。
「自分は知識が多い」と勘違いしやすい現代
数多くの実験で分かっているのは「私達は自分の持っている情報を多く見積りすぎている」ということです。
この心理動作は「後知恵バイアス」や「流暢性の罠」のような認知の特徴にも現れます。
Googleで検索すればすぐに答えが出る環境に身を置いている私達は
検索して初めて知った結果を「前から知っていた」「そうだと思っていた」「記憶した」と勘違いして認識してしまうのです。

実際は情報を「認知」しただけで「記憶し、理解して使える」状態にはなっていません。
この認知の歪みが知的謙遜を弱めてしまいます。
そこで、今回ご紹介した方法を使うことで、自分が正確には理解していないこと、知識の限界を知ることができ、知的謙遜が鍛えられるのです。
知的謙遜のポイントは、自分の限界を知ると同時に、知識とエゴを切り離し、自分と異なる相手の意見を尊重し、柔軟に立場を変える姿勢が大切です。
まとめ
最近の心理学が、謙遜、得、親切、許し、慈悲、祈り、感謝など、心の有り様について多くのメリットを提示しているのは本当に興味深いです。
その中でも身の回りの情報が多すぎる現代で知的謙遜は重要性を増してきているようです。
まとめ
- 他人に教えると知識の限界を知ることができる
- 他人の視点を取り入れると意見を尊重する姿勢と判断力が上がる
- 情報を複数化すると知的謙遜を妨げるバイアスを防ぎやすい
- 質問テクニックで相手や自分の意見を視点を変えて検討できる