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成長に欠かせない能力「知的謙遜」とは?判断能力や人間関係などメリット解説
心理学では90年代頃から「謙遜(Humility)」の研究が始まり、数々のメリットがあることがわかり始めました。
その中でも「知的謙遜(ちてきけんそん)」が多くのメリットをもたらすとして脚光を浴びています。
多くの心理研究では、知的謙遜を大きく3つの視点から捉えています。
- 自己の知識の限界を理解していること
- 世の中の不確実性に耐えられること
- 他人の意見を尊重すること
「うぬぼれ」や「傲慢(ごうまん)」の対極にある様な概念です。
今回は知的謙遜のメリットをご紹介します。
知的謙遜のメリット:成長
近年調査が進み、様々なメリットが判明し始めた知的謙遜。
そのメリットで代表的なものは「成長スピードが上がる/成長の伸び代が期待できる」ことです。

デューク大学やペパーダイン大学の調査でわかったことは、知的謙遜が強い人ほど
知的謙遜が強い人の特徴
- 好奇心
- 心の広さ
- 中立性
を持ち合わせているようです。
他人に合わせてばかりな印象を持たれるかもしれませんが、知的謙遜が強い人でも硬い信念を持つことができます。

その一方で自分の「知識の限界」や間違えやすさにも気づいているので、何を間違ったのかを知ろうとする意思や好奇心、失敗から学ぶ広い心を持てます。
知的謙遜が強い人ほど
- 意見が違う人からも学ぶことができる
- 長期的にみると知的発達のスピードが早い
などの報告が多いのはこのためです。
能力の高い人材より、成長する人材を採用する企業
知的謙遜の重要性をいち早く認識し、人事採用に取り入れているのがGoogleの様な先端企業です。
Googleで人事担当を務めたラズロ・ボックは知的謙遜の重要性を次の様に指摘していいます。
- Googleの採用で重視するのは知的謙遜と責任感
- 問題解決のためにチームとして働くには知的謙遜が必要
- 他者の貢献も正しく認める
- 知的謙遜がなければ失敗から深く学ぶことはできない
Googleほどの企業になれば、採用候補は全員が優秀な人物です。
ですが、有名大学を主席で卒業した様な学生が、仕事の現場で能力を発揮できないことは多いようです。

ラズロさんも「優秀な人ほど失敗を経験したケースが少なく、失敗から学ぶ方法を学べていないケースがよくある」と指摘しています。
優秀でも知的謙遜がなければチームとしての役割や成長に期待が持てないことを理解しているのです。
問題を解決しようとする当事者意識を持ちつつ、自分の立場に固執せずに他人のアイデアを受け入れる謙虚さを持ち、失敗から深く学ぶ「知的謙遜」が強い人材を採用したいようです。
知的謙遜のメリット:判断能力
知的謙遜が強い人ほど客観性が高く、判断能力も高いと報告する調査が多いです。
知的謙遜で得られる「柔軟な心」は相手の意見も尊重し、バイアス(思い込み)や、凝り固まった考えに囚われる状況を減らし的確な判断の助けになるようです。
デューク大学が行った実験は。
実験
- 参加者全員の知的謙遜レベルを測定
- 極論を主張するエッセイや、健康に関するデータを読むように指示
- 内容がどれだけ客観的な事実に基づいているかを判断してもらう
その結果、知的謙遜レベルが高い人ほど
- 中立性が高い
- 意見が異なる相手でも簡単に批判をしない
- データーや意味、解説を精査するのが上手い
という結果でした。
いずれも自分の意見やバイアスに囚われず、客観的な判断をするには欠かせない要素です。
知的謙遜でバイアスが減少
知的謙遜が強い人は総じて思い込み=バイアスに陥りにくいことがわかっています。
- ダニングクルーガー効果
=能力が足りない人ほど、自分の能力不足に気づくことが出来ず、出来もしないのに自信だけはある状態に陥るバイアス

- 正常性バイアス
=何かトラブルが起きそうな状況でも「自分だけは大丈夫」や「今回は問題ない」と思い込んでしまうバイアス
知的謙遜にはこの他様々なバイアスに陥りにくくする効果があります。
知的謙遜のメリット:人間関係
知的謙遜は「いまの自分の知識や思考法は、トラブルを理解するのに十分と言えないのでは?」
と気づく状況を生み出し、周りに意見を聞いたり支援を求めることで、判断能力だけでなく人間関係も良好にしてくれます。

さらにコロラド大学の調査では、知的謙遜が強い人がリーダーになった場合
「自分の間違いを認め、仲間の強みを見極めることができる」
などのメリットも示唆されています。
自分のエゴを抑え相手を尊重する姿勢が人間関係の絆を深めるようです。
さらに知的謙遜には客観的な判断を高めるだけでなく、相手の意見に強い拒否反応を示さない分、日々のフラストレーションを下げる働きもあり、人間関係が良好になりやすいようです。
偉人達と知的謙遜
知的謙遜についての研究は近年始まったものですが、偉人たちは早くからその存在に気付き重要性を説いてきました。

「知るを知るとなし、知らざるを知らざるとなす、これ知るなり」by孔子

「唯一の真の英知とは、自分が無知であることを知ることにある」byソクラテス
彼らの他にも多くの偉人達が知に対して謙遜する姿勢を示し、推奨しています。
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まとめ
今回は知的謙遜がもたらすメリット「成長/判断能力/人間関係」を解説しました。
この他にも「忍耐強くなる/セルフコントロール能力が上がる/仕事の効率が上がる」などのメリットも報告されています。
これからは知的謙遜の鍛え方や、自分の知的謙遜レベルを知る方法なども解説していこうと思います。
知的謙遜は後天的に伸ばすことが期待できる能力らしいので意識していこうと思います。
まとめ/知的謙遜は
- 学びの幅や柔軟性が高まり長期的な成長につながる
- 柔軟な心はバイアスを軽減し客観性や判断能力を高める
- 相手への批判を減らし対人ストレスも低下、対人関係が良くなる
- 昔から大切だと言われてきた能力で近年科学的に実証され始めた