何事も完璧にこなしたい。
完璧主義の精神は一見ストイックで、妥協を許さない姿勢のように見え、社会では美徳のように扱われてきました。
しかし、実態はどうか調べてみると、完璧主義な人ほど、発揮できる能力が低く、やらなくてはいけない物事を先延ばしし、メンタルが悪化しやすい事がわかってきました。
どうしてそのような事が起きてしまうのか、解説していきます。
目次
完璧主義はヤバイ!先延ばしからメンタル悪化、子供への影響まで解説
ダルハウジー大学がアメリカやカナダ、イギリスの、のべ25000人分のデーターを使ったメタ分析では1990年以降から完璧主義者が急増している事がわかりました。
理由は社会競争が激化してきたことや、SNSなどがあげられるようです。
また、完璧主義対策はセルフコンパッションがお勧めの方法です。
がんばりすぎるあなたへ 完璧主義を健全な習慣に変える方法
完璧主義がメンタルによくない2つの理由
一見そこまで悪くないように見える完璧主義が、どうしてメンタルに悪影響を及ぼすのか、理由は主に二つです。
- 期待に答えようとするストレス
- 社会的に孤立しやすくなる
この二つを構成する細かい要素もみていきましょう。
期待に答えようとするストレス
完璧主義の人の多くは
完璧主義の思考
- 他人から完璧を求められている
- 完璧でいないと認められない、愛されない
- ミスは許されないし、絶対回避したい
ということを強く感じています。
その結果、失敗することを強く恐れ、高すぎる目標や基準を設定してしまう場合が多いのです。
絶対に失敗できない場面に強い緊張感やプレッシャーが伴うのは言うまでもなく、映画でもドラマでもスポーツでも一目瞭然です。
そんな状況を自ら設定してしまう完璧主義の人は、常に精神がすり減りやすく、心が折れやすい状況に陥ってしまいます。
その結果、小さなミスにも自己批判がどんどん高まっていき、自分を追い詰めてしまうのです。
ミスをしたくないので、新しい挑戦も出来なくなり、やらなければいけない事を先送りし始めます。
そして次は努力できない自分、何もしない自分を批判してしまうのです。
社会的に孤立しやすくなる
完璧主義の特徴に「他人にも高い基準を要求する」があります。
皆さんも経験がありませんか?
そんな完璧主義の人と一緒にいると色々大変、気が休まらない、細かなことに囚われ円滑に進まない、共同作業ができない、など様々な問題が巻き起こります。
結果、完璧主義の人は周りと上手く行かないケースが多く、社会的に孤立しやすくなります。
過去の記事で社会的な孤立は健康や、幸福にも大きな関連がある事も紹介しています。
さらに問題なのは、完璧主義の人がグループのトップにいる場合です。
下の人の小さなミスも許さず、高すぎる基準を求めます。
そして下に付いている人は
完璧主義は伝染する
- 上から完璧を求められている
- 完璧でいないと認められない、愛されない
- ミスは許されないし、絶対回避したい
と感じ始め、組織全体の完璧主義傾向が高まってしまいます。
また努力に対して完璧主義傾向が強まると、夫婦や組織などの共同の目標より、どれほど完璧に行動したかの目標を優先する傾向が強まり、有意義な人間関係に参加する機会を失わせます。
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完璧主義が増える要因
完璧主義が増える要因は様々ありますし、先ほど説明したように、完璧主義を求める事で、さらに周りにも完璧主義者を作る、伝染のような要素もあります。
ここでは完璧主義が増える要素で特に身近な二つをご紹介したいと思います。
- SNSの普及で完璧主義が加速した
- 親や上司などの役割
この二つについて解説します。
解説の前に!
その前に、なぜSNSが要因なのか説明するためのキーワード「社会的証明」と「承認欲求」を簡単に説明します。
- 社会的証明
ロバートチャルディーニ:影響力の武器で詳しく解説されている「社会的証明」とは
私達は社会や周りの人を見て行動を決めていて、類似性(自分に似た人)が高い相手からより強い影響を受けること。
- 承認欲求
私達は大昔から群で暮らしていました。
鋭い牙や爪を持たなくても、チームワークで獲物をかり、役割分担をして生きてきたのです。
これは裏を返せば、群や、集団の中で認められ、役割を得なくては、独りで生きてはいけないという事です。
集団で認められない、役割がないことは死に直結するくらい危険を伴う事でした。
ですので私達の脳には、現代でも、社会的比較、常に集団での自分の立ち位置や、役割を気にして、皆んなに認めて欲しい、生存本能に近い承認欲求が存在しています。
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
SNSの普及で完璧主義が加速した
昔からスパースターや、凄い人は海外にも国内にも沢山いました。
ですがそれを知る方法がテレビ、新聞、ラジオぐらいしかなかったのです。
いくらマイケルジャクソンが凄くても、それは遠く海外、別世界の話、自分とは類似性が高くありません。
ですがSNSはそうではありません。
自分と同じくらいの歳で、自分とより類似性が高い人達が、自分より幸せで、より充実し、成功し、皆んなから賞賛される、ように見える生活を次々に投稿します。
彼らには自分よりフォロワーが多く、いいねも沢山ついています。
SNSを見て、楽しんだり、満足するのと同時に、脳は自分と類似性の高い彼らを比較し始めます。
SNSを一日3〜6時間以上見る人もいるので、脳がSNSの世界を自分の所属する集団、社会と捉え、立ち位置を気にするのは自然な事です。
今まで身近な、周りにいる人と自分を比較していた脳は、SNSによって、より広い世界の、より幸せそうな人達と自分を社会的に比較し劣等感を感じやすい状況になっています。
あの子みたいに痩せてないといけない、あの人みたいに有名じゃないと、面白いと思われたい、変わっていないと、特別でないと、個性的でないと、何かのオタクでないと、立ち位置は?役割は?など自然な承認欲求が湧いてきます。
承認欲求は人間が持つとても強い欲求であるため、これはかなりのプレッシャーで、現代的な苦しみでもあります。
これがどんどん強まると「誰よりも個性的でないといけない」「より完璧でいないと認められない、愛されない」「常に〇〇な自分で居続けないといけない」等の完璧主義の発想が生まれやすくなるのです。
親や上司などの役割
セルフコンパッションの著者クリスティーンネフによると
子供の頃に批判的な親のもとで育った場合、成人しても自分に対して批判的である傾向がある事が実証されているそうです。
親が完璧主義などの理由で、子供の些細なミスを許さないスタンスをとると
子供は早くから自分が悪く、欠点があり、ありのままの自分は受け入れられる権利がないと思い込見ます。
完璧主義で批判的な親は、自分が子供を思い通りの人間に育てる事ができる望みを持っています。
親のこの態度は子供の恐怖と不信に繫り、子供達は「完全な存在になること以外に愛される資格は無い」と信じるようになります。
完全な存在になる事が不可能であることを知ると、子供達は親から拒絶される未来を思い描きます。
自己批判の原因を調べる実験の多くが親に焦点を当てていますが、祖父母、兄弟姉妹、教師、コーチなど子供の周辺にいる人物が継続的に批判を行う事でも子供の自己否定感は増します。
親は子供のためと、幼少期から英才教育に務み、厳しく、間違いが無いように、より完璧であるように導きたい気持ちがあります。
失敗から学ぶ事、失敗から立ち直る事、誰でも失敗する事、失敗した人を許す事などより
失敗をしない事、人生をより、楽で安定したものにする事を目標に教育が行われがちです。
これらは子供の完璧主義傾向を強め、親の教えや考えに素直な子ほど、失敗した人、不完全な人を劣っていると判断するようになってしまいます。
人や社会自体が完璧主義傾向をますます高めてきた90年代、その世代が親になる現代では親子関係で完璧主義の問題が予測されるのです。
私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む
まとめ
私も最近までかなり完璧主義でした。
今でもその傾向があることをふとした瞬間に気づく事があります。
まずは完璧主義に気づく事、それに苦しんでいた自分を受け入れる事、そして自分に優しく労る事=セルフコンパッションが完璧主義への対策として有効だとされています。
まとめ
- 期待に応えようと、目標を高くし自分を追い詰めてしまう
- ミスや不完全であることに常にストレスを感じる
- 周りにも同等の水準を求め、共同作業に向かず社会的に孤立しやすくなる
- SNSでの社会的比較は承認欲求を刺激し完璧主義傾向を強める
- 社会や親の完璧主義傾向も強まっている
- セルフコンパッションという解決策がある
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